日々の恐怖 1月14日 ねこ(2)
見えないねこは息子に誘導され、軒の下に古いクッションを敷いてもらい、そこを居場所にしたようだった。
「 ねこちゃん嬉しいって! お母さんありがとう。」
満面の笑みの息子に、家の中には入れないことを約束させたという。
「 まぁ、イマジナリーフレンドとか言いますしね・・・・。」
小さな男の子の可愛らしい様子にほのぼのしながら、私は言った。
「 そのねこちゃんがおうちに来てから、何か変わったことは?」
「 それがあるんですよ」
私の問いに、彼女は身を乗り出すように言った。
「 お恥ずかしいんですけど、うちは古い家で昔からよくネズミが出るんです。
色々対策してもなかなか駆除できなかったんですけど、息子が猫を連れて来た途端、ネズミが姿を見せなくなって。」
「 それはそれは。」
「 こんなことなら、もっと早く来て貰えばよかった、なんて。
葉っぱとネズミだけじゃ、と思って、時々鰹節なんかもあげるんですけど、すぐにお皿は空っぽになってます。
まぁ、全部他の猫の仕業かもしれませんけどね。」
その時、ふと足元を何かが通り過ぎた気がした。
体を擦り付けながら歩く、猫特有の歩き方。
しかし、足元を見ても何もいない。
「 もしかして、ねこはお家に上がって来ます?」
「 あら、ごめんなさい。
息子がこっそり何度か上げたら、玄関を自分で開けて入ってくるようになったみたいで。
私は全然わからないんですけど、お客様に時々ちょっかいをかけるみたいなんです。
大丈夫ですか?」
「 ええ、ねこは好きですから。」
「 ならよかった。」
知人の言葉に被さり、間延びした猫の鳴き声が聞こえた気がした。
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