日々の恐怖 8月5日 足音
うちは1階店舗、2階住居の家族経営の商店だ。
昼夜飯は2階で祖母が作っていた。
11時、18時頃になると2階からドンドンと足音が聞こえ、
“ ああ、ご飯作ってるなぁ。”
とひと息つくのが日常だった。
祖母は右脚がちょっと不自由なので、その足音もちょっとクセがあった。
祖母が病気であっさり亡くなり、しばらくすると11時頃だけ2階からドンドンと音がするようになった。
なぜか、
“ あっ、ばあちゃんの足音だ。”
と嬉しくなった。
あるとき11時頃、両親と3人で話してる時にまたドンドンと足音がした。
父がビックリして、
「 誰もいないだろ?」
と聞くので、私が、
「 ばあちゃん、飯作りに来たんじゃね。」
と言い、母が、
「 いつもこうやっておかあさんが教えてくれてから、お昼作りにいくのよ。
上がっても、誰も見えないけど。」
と笑顔で言った。
“ 何だ、母も聞こえてたんだ。”
と嬉しくなった。
しかし、父が、
「 お前らがそうやってばあちゃん捕まえてると成仏できないんだから、ゆるしてやってくれ。」
と言われて、
“ ハッ!?”
とした。
それからドンドンは全く無くなった。
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