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日々の恐怖 8月6日 シャワー室

2016-08-06 18:30:38 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月6日 シャワー室




 昔、うちの学校はプールに併設して古いコンクリートのシャワー棟があった。
入り口はひとつで、中に入ると左右に男女別の扉があって、その奥は脱衣所みたいなロッカー室、さらにもうひとつ奥がシャワー室(敷居がなくてノズルだけがずらっと並んでいる)という構造だった。
男女のロッカー室・シャワー室はちょうど左右対称になっていて、天井のところの20センチぐらいだけ男女で吹き抜けになっていた。
 その男子シャワー室の中に、夜一番最後まで残っていた水泳部の奴らが深夜まで閉じ込められた。
そいつら曰く、いつの間にかシャワー室と脱衣所の間の引き戸が開かなくなっていたらしい。
 部活動終了の報告は先に帰った部長がやっていたため、しばらく後に当直に電源が落とされて真っ暗になった。
運悪くみんなタオル一枚持ち込んでいなかったので濡れた体を拭くことも出来ず、シャワーの温水はやがてタンクの備蓄を使い切って水に変わり、晩秋の夜を震えながら過ごした。
 それで、真っ暗になってから数時間後、突然女子シャワー室のほうからガラガラと引き戸を開ける音がした。
そして、ペチペチとタイルの床を人が歩く気配がする。
 当然、閉じ込められた男子たちは大声で助けを求めたわけだが、どういうわけかその足音の人物はそれに全く反応することなく、蛇口をひねってシャワーの水を出し始め、真っ暗闇の中で3分ほどシャワーをばしゃばしゃと浴び続けた。
さすがに不気味になった3人が、そこにいるのは誰だと素性を聞いても無視し続けて、最後はキュッと水を止めて、入ってきたときと同じように水音を立てながら引き戸を開け閉めして、その場からいなくなった。
それでも、続くロッカー室の扉や、建物自体の扉を開け閉めする音はいつまで経っても聞こえなかった。
 結局そいつらは、深夜の2時ごろに家族の通報から始まっていた捜索で助けられたんだが、女子シャワー室の一件から救出までの間に2回もしくは3回、引き戸を隔てた自分たち(男子)のロッカー室からロッカーの扉を閉めるような金属音が聞こえたという。
 引き戸は救出時にはちょっと引っかかっただけで特に問題なく開いたらしい。
立て付けが悪かったのでは、とのことだった。
 しかし出入り口の扉はというと建物、男子ロッカー、女子ロッカーのすべてが閉じて鍵がかけられており、扉の音を立てずに出入りすることはちょっとありえない状態だった。
そして、その鍵束は男子ロッカー室内のベンチの上と、職員室の2箇所にしかなかった。
 この話が出てからというものシャワー棟は気味悪がられるようになり、それまで唯一女子シャワーを使っていた女子バスケ部は、シャワーを浴びずに帰るようになった。
 しばらく後になって別の場所にシャワー付きの部活棟が出来上がり、古いシャワー棟は取り壊され始めた。
今後、メディアセンターという建物が出来るということで、俺たちの卒業時には更地になっていたが、それから10年近く経った今も、何故かそこには何も建っていない。













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