消費者金融議論については47thさんのところでさらに展開されていますので興味のある方はこちらのまとめエントリをまずご参照ください。
では、私なりに考えてみたのですが、47thさんのところにTBされたbewaadさんのエントリで言及されていた貸金業制度等に関する懇談会・第17回会合・GEコンシューマー・ファイナンス株式会社 土屋監査役 提出資料はとても示唆に富みます。
欧米では消費者金融の世界でも新商品・新業態の進出によりサービスと利用者の棲み分け、金融会社・業態間の競争が盛んなようです(当然それに伴う弊害もあるのですが)。
一方、日本では「消費者金融」と「クレジット会社」と「銀行」の3つの業態しかなく、前2者では信用力によって多少の低金利商品は出ているものの、新規参入といっても銀行と消費者金融との提携程度であり、プレイヤーが増えたり競争を促進する方向に進んではいないように思います。
実態に詳しいわけではないので誤解かも知れませんが、消費者金融への新規参入者も新しいサービスや絞り込んだ顧客への新商品を提供しているというよりは上限金利を生かして既存業者と同じパイ奪い合おうとしているように思います
つまり、各社ともスポット的な資金需要に対してなら合理的であろう(場合によってはもっと高くても正当化しうると思います)高金利を、リボ払いのような形で日常の資金繰りのための借り入れとして組み込んでしまおうとするいわば「シャブ漬け」(不適切かもしれませんが)的な商品を供給することで利益を得ているのが現状ではないでしょうか。
その意味では47thさんのおっしゃる
この基礎的なロジックの上で、①消費者金融市場が競争市場として機能していない、②システィマティックな行動バイアスが存在するという主張はあり得ます。
の①が現実としてあるのではないか、というのが私の漠然とした考えです。
規制業種が結果的に新規参入へのハードルになり結果競争が制限されるという点では第一種電気通信事業者とか携帯電話会社などの許可制の事業ではよく見られますますが、登録制である貸金業においても、競争が働かず上限金利に張り付いてしまうというという現象が起きているのかもしれません。
私も47thさん同様当座のスポット的な資金需要については上限金利の設定を厳しくする事は逆効果だと思います。その意味で上限金利を引き下げさえすれば問題が解決するというものでもないと思います。
ただグレーゾーン金利の撤廃で消費者金融業の利益の大半が吹っ飛ぶとか、上限金利を下げると消費者への信用供与がなされなくなるという議論も逆の意味で論理性に欠ける感情論のように思います。
もしそうなら、逆にいえばそれこそが大半の貸付が上限金利に張り付いていて競争原理が働いていない証拠ではないでしょうか。
または上限金利による超過利潤にあぐらをかいて高コスト体質になっているために上限金利を引き下げられると利益を出せないだけかもしれません。
本当は上限金利がなく、業者がみずからの事業判断で金利(商品)を提供し、消費者は自由な選択でそれを選ぶというのが確かに理想ですが、現状はそこには程遠いような感じがします。
しばらくは、本当に引き下げ後の上限金利でビジネスに参入する人がいないのか様子を見たほうがいいかもしれないと思っています。
先のGEコンシューマ・ファイナンスのレポートにあるように、欧米では日本と違う形での消費者金融の業態がいろいろあるようです。ですから理想論でいえば、日本においても新たな消費者金融の業態・市場を開拓することが可能なのではないかと思います。
銀行も、既存の消費者金融と提携しておこぼれにあずかろうとするだけでなく、積極的に新業態を開拓したらどうでしょう。
たとえば三井住友銀行のルーツの1つである太陽銀行は元は「日本無尽」ですから、低クレジット・無担保貸出というのは家業のひとつでもあったわけです(もうひとつのルーツである平和相互銀行は「金屏風」系への融資なのでちょっと畑が違うかもしれませんがw)
なのでプロミスとの提携などせずに、家業に立ち返ってみたらいかがでしょうか。
最後に、政策論としてはスポット的な需要(近い将来のキャッシュフローで返済を予定している借り入れ)に対しては上限金利をもっと引き上げる一方で、リボ払い的な商品(継続的なキャッシュフローで利払いする運転資金的なもの)の上限金利は低くする、という政策もあるかもしれないなぁとも思ったのですが、どこで線引きをするかは難しそうなので、思いつきレベルで終わってしまいそうですね。
今回、アイフルの業務停止という事件から消費者金融をめぐる経済学的議論や法政策の議論に広がりをみせ(私がすべてついていけている自信はないのですが)こういうのがblogのいいとこかな、と改めて思った次第です(まあ、私は横からチャチャ入れてただけですが)