大阪大学の吉森保教授及び中村修平准教授のグループは東京都医学総合研究所の鈴木マリ主任研究員、大場柾樹大学院生(芝浦工業大学)らと共同で、細胞の新陳代謝を行い細胞の健康維持に必要な機能であるオートファジーが加齢に伴い低下してしまう現象のメカニズムを明らかにした(2月19日発表)。
オートファジーは、細胞内の不要なたんぱく質を分解して再利用する。生活習慣病やがんなどの病気とも関わりがあると注目を集め、大隅良典東京工業大栄誉教授が仕組みを解明し、ノーベル生理学・医学賞を受けた。
オートファジーは加齢に伴って低下することが知られている。研究チームはオートファジーを抑える”ルビコン”と老化の関係を線虫やハエ、マウスで詳しく調べ、ルビコンは加齢に伴い約1.5~2倍に増えた。”ルビコン”を働かなくした線虫やハエは寿命が約20%延びた。老化による運動機能低下も改善した。
マウスで”ルビコン”を働かなくすると腎臓の組織が硬くなる線維化が抑えられた。パーキンソン病を起こす実験では病気の原因たんぱく質の塊が大きくならなかった。人でも同様の仕組みがあるとみている。
”ルビコン”が増えるのを抑える物質が、自立して生活できる健康寿命を延ばせると期待する。寿命も延びる可能性がある。
2019年度にスタートアップを設立し、健康寿命を延ばす医薬品や食品の開発を目指す。
スタートアップを立ち上げる吉森教授は「役に立つか分からない基礎研究から大きなイノベーションが生まれることを自ら実証したい」と話す。
◆用語説明
〇オートファジー
細胞内に存在するタンパク質や構造体を二重膜で包み込み、ライソゾーム(多種の消化酵素をもつ細胞小器官)と融合することで包み込んだ内容物を分解する機構。オートファジーが開始すると、細胞質内に隔離膜が出現する。隔離膜は伸長して分解対象物を取り囲み、オートファゴソームを形成する。オートファゴソームはライソゾームと融合してオートライソゾームとなり、ライソゾーム内の消化酵素により分解対象物は分解される。オートファジーは、細胞内の不要物を分解することにより浄化作用を持つ。近年、様々な疾患においてオートファジーの機能が低下していることが確認されており、細胞内浄化作用が抑制され細胞内に不要物が溜まることが疾患の発症につながる可能性が考えられている。2016年に大隅良典博士がノーベル医学生理学賞を受賞されて以来大きく注目されている。
〇ルビコン(Rubicon:Run domain Beclin-1 interacting And cysteine-rich containing protein)
本研究グループの吉森教授らにより2009年に発見された、オートファジーを抑制する働きを持つタンパク質。オートファジーの最終ステップであるオートファゴソームとライソゾームの融合を抑制し、細胞内のRubiconが増加するとオートファジー機能が低下することが知られている。
〇RNAi(RNA interference)法
人工的にRNAを導入することにより、目的とする遺伝子の発現を抑制する方法。
〇易凝集性タンパク質
異常凝集を作りやすいタンパク質のことで、神経変性疾患ではこれらの蓄積が発症原因と密接に関わっている。例えば神経変性を来すハンチントン舞踏病等のいわゆるポリグルタミン病は、通常より長いポリグルタミン鎖を含むために細胞内で凝集するようになった異常タンパク質(PolyQ)の発現により発症する。
オートファジーは、細胞内の不要なたんぱく質を分解して再利用する。生活習慣病やがんなどの病気とも関わりがあると注目を集め、大隅良典東京工業大栄誉教授が仕組みを解明し、ノーベル生理学・医学賞を受けた。
オートファジーは加齢に伴って低下することが知られている。研究チームはオートファジーを抑える”ルビコン”と老化の関係を線虫やハエ、マウスで詳しく調べ、ルビコンは加齢に伴い約1.5~2倍に増えた。”ルビコン”を働かなくした線虫やハエは寿命が約20%延びた。老化による運動機能低下も改善した。
マウスで”ルビコン”を働かなくすると腎臓の組織が硬くなる線維化が抑えられた。パーキンソン病を起こす実験では病気の原因たんぱく質の塊が大きくならなかった。人でも同様の仕組みがあるとみている。
”ルビコン”が増えるのを抑える物質が、自立して生活できる健康寿命を延ばせると期待する。寿命も延びる可能性がある。
2019年度にスタートアップを設立し、健康寿命を延ばす医薬品や食品の開発を目指す。
スタートアップを立ち上げる吉森教授は「役に立つか分からない基礎研究から大きなイノベーションが生まれることを自ら実証したい」と話す。
◆用語説明
〇オートファジー
細胞内に存在するタンパク質や構造体を二重膜で包み込み、ライソゾーム(多種の消化酵素をもつ細胞小器官)と融合することで包み込んだ内容物を分解する機構。オートファジーが開始すると、細胞質内に隔離膜が出現する。隔離膜は伸長して分解対象物を取り囲み、オートファゴソームを形成する。オートファゴソームはライソゾームと融合してオートライソゾームとなり、ライソゾーム内の消化酵素により分解対象物は分解される。オートファジーは、細胞内の不要物を分解することにより浄化作用を持つ。近年、様々な疾患においてオートファジーの機能が低下していることが確認されており、細胞内浄化作用が抑制され細胞内に不要物が溜まることが疾患の発症につながる可能性が考えられている。2016年に大隅良典博士がノーベル医学生理学賞を受賞されて以来大きく注目されている。
〇ルビコン(Rubicon:Run domain Beclin-1 interacting And cysteine-rich containing protein)
本研究グループの吉森教授らにより2009年に発見された、オートファジーを抑制する働きを持つタンパク質。オートファジーの最終ステップであるオートファゴソームとライソゾームの融合を抑制し、細胞内のRubiconが増加するとオートファジー機能が低下することが知られている。
〇RNAi(RNA interference)法
人工的にRNAを導入することにより、目的とする遺伝子の発現を抑制する方法。
〇易凝集性タンパク質
異常凝集を作りやすいタンパク質のことで、神経変性疾患ではこれらの蓄積が発症原因と密接に関わっている。例えば神経変性を来すハンチントン舞踏病等のいわゆるポリグルタミン病は、通常より長いポリグルタミン鎖を含むために細胞内で凝集するようになった異常タンパク質(PolyQ)の発現により発症する。