ワールドシリーズ第4戦、大事な場面でピンチランナーに起用されたルーキーにとっては悪夢としか言いようがない出来事だったろう。セントルイスカージナルスのピンチヒッター、クレイグが上原から放った安打で反撃の可能性が出てきた9回裏、まさかの鋭い牽制球で思わずバランスを崩して一塁に戻れなかった。泣き出さんばかりのウオングに、打席に立っていた打撃好調のベルトランも「この若者には気の毒なことをした」と言っている。
昨夜は微妙な判定の守備妨害によるサヨナラ負け、今日はレッドソックスは勝ちはしたものの意外な幕切れ。もちろん、上原の喜びようは尋常ではなかった。MBLと言えば巨額の興行収入が動く、世界有数のプロスポーツだが、守備妨害や牽制球による幕切れはそうあるものではない。大リーガーと言えどもやはり人の子、というところか。ただ、上原の牽制球は、昨夜の走塁妨害のような論争や議論、疑問の余地のない明確なプレーだった。
なお、今日のこの勝負(4-2でレッドソックスの勝ち、2勝2敗のタイ)の報道ぶりが、ワシントンポスト(WP)とニューヨークタイムズ(NYT)とで対照的だった。WPでは3ランホームランを打ったそれまで絶不調のゴームスおよびそれを引き出した主砲オルテイーズに焦点を当てそのホームイン場面が掲載されていた一方、NYTは牽制の後上原が一塁手ナポリと勝利の喜びを分かち合い抱き合う場面が掲載されていた。勝利を決めた3ランと、9回を締めた牽制球とでは、3ランの方が勝利への寄与が大きいのは明らかだが、前日の走塁妨害が明暗を分けたことを思い出せば、今日は牽制球と言う何やら対になるような幕切れに勝負の綾を見たのがNYTの記者なのだろう。NYTといえば通常はヤンキース一辺倒だが、ヤンキースがポストシーズンにも進出できなかった今年、その代わりとして宿敵だが同じ東部のボストンを応援する心理も良く判るところ。