缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

缶詰のある風景『フィッシュ・オン』

2010-07-25 14:13:02 | 連載もの 缶詰のある風景

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 銀山平は一年のうちでほぼ半分近くが雪で蔽われる。電気も、ガスも、水道もない。年賀状が五月に配達される(中略)。
 話を聞いているうちに私は六月、七月、八月と一夏をここにこもって暮らしてみようと思いたった(中略)。
 私は小説を書きたかったのである。
 開高健『フィッシュ・オン』

 純文学を書き、そのかたわらで世界中を釣りしてまわった開高健氏。彼はしばしば
「日本のヘミングウェイだ」
 なぞと言われる。
 しかしその文体は、ヘミングウェイとはまったく違う。ヘミングウェイが情景描写の簡潔なセンテンスで進めていくのに対し、開高健は修辞に徹した濃密、重層的な文体なのだ。
 冒頭で紹介したのは、釣りの紀行文の一部。新潟と福島の県境にある銀山湖という、釣り人には憧れの場所で大岩魚を狙いつつ、氏は小説を書こうとする。
 大岩魚と聞いて眉がピクリとしたあなた。あなたこそ、街に生きても心に常に荒野を持っている御仁でありましょうな。




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 これは日本初の岩魚を使ったリエットだ。
 しかも1kgを超える大岩魚を使っているという。
「そんなバカな!?」
 そう思われる太公望諸賢も多いと思う。
 使われる岩魚は「柿島の大岩魚」と呼ばれる養殖魚。伊豆天城山から流れる清流・地蔵堂川で、こだわりの餌で育てられているらしい。
 そして、リエットとは何ぞや。
 リエットはフランスの料理法のひとつで、肉などをペースト状にした保存食のこと。元来はラードでじっくりと煮込むらしいが、今ではパテとほぼ同じものと考えていいと思う。




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 かくのごとし。
 バタール(フランスパン)にたっぷりと大岩魚のリエットを塗りつけ、ありあわせの野菜を少々、添えた(ピーマンとドライトマト)。
 では失敬して、ひと口...。
 やっ、何と濃厚なコクと旨味。
 まずバターの芳醇な香りがあって、同時に鮭のような風味が立ち昇ってくる。
 さもありなん。イワナはサケ目サケ科なのだ。
 とはいえ、岩魚には野趣溢れる独特の香りがある。筆者が釣り上げた岩魚を塩焼きで食べたときは、魚というより小動物の肉を食べているようだったのを憶えている。
 ともかく濃厚、芳醇。まるで開高健の小説である。
 間もなく発売開始というまったく新しいこの瓶詰。静岡の柿島養鱒から販売される予定だ。

 折しも今年は、開高健の生誕80周年。
 もし彼が存命ならば、こんな瓶詰を見て
「オーパ!」(驚きを表すスペイン語)
 と叫ぶに違いないだろうなァ。




 内容量:130g
 原材料名:イワナ、生クリーム、牛乳、バター、食塩、コーンスターチ、グラニュー糖、香辛料、にんにく
 原産国:日本(販売:静岡・柿島養鱒
 予定価格:2100円