朝倉がハム・ステーキを注文するとすぐ眼の前で作ってくれた。フライパンから跳ねた脂に火がついて、炎が高くのぼる。
~中略~「お待ちどうさま」
マスターは焼きたてのステーキにバターの塊りを乗せて、朝倉のカウンターの前に置いた。旺盛な食欲でそれを胃に送りこみながら、朝倉は札束でふくらんだスーツ・ケースのことを考えていた
大藪晴彦『蘇える金狼 野望編 (1)』 価格:¥ 735(税込) 発売日:1974-03 |
私には奇妙な癖がある。
体調や精神状態が弱っているときには、大藪晴彦の小説を何冊も読み続けることがあるのだ。
作品のヒーローからエネルギーを分けてもらうためではない。荒唐無稽な文章を、頭の中に流したいだけなのだ。その様子を例えると、電光掲示板のデジタル文字が、次々と流れ去っていく様にそっくりである。
巻取鍵が巨大だ
ということで、今回の缶詰さんはハム缶である。それも、東欧はポーランドからいらした缶詰さん。
ブログ仲間のNoritanさんが、出張のお土産を下さったのである。以下は彼からのメールを抜粋したもの。
こんにちは。ドイツ、ポーランド出張から帰ってきました。
あとで気づいてみれば「あれ、これは禁輸品じゃん」というおみやげがあるのですが、いかがですか。
法規を超越したこのご厚意、大藪晴彦の小説に最もふさわしいもの、と言わねばならないだろう。
ありがたいことです。
おっ、なんてことだ。巻取鍵を操作したとたん、美味そうな肉汁がぴゅるると飛び出したではないか。それも、とめどなく溢れてくる。
「とりあえず...」
と、沖田浩之の台詞をマネして写真を撮っておく。
汁の匂いを嗅ぐと、上質な豚肉のかほりがする。
かくのごとし。どーん、と455gのボリュームである。
この存在感。圧倒的な食べ応えの予感。
胸の奥が熱くなった。
巨大な肉は人を感動させる。
あまつさえ、
「ざまみろ、どうだどうだ!」と泣きそうになってしまう。
なぜここで「ざまみろ」なのか、不明ではあるが。
ナイフでさっくりと切りとり、口中へ...。
これはこれは上等なロースハムである。歯ごたえのあるところ、柔らかく崩れるところと、肉の噛みごたえが素晴らしい。
塩分はかなり強い。醤油などをかけなくとも、充分に飯のおかずとなってくれそうだ。
悲しい動乱の歴史を持つ国は、おかずの味付けが濃いのかもしれない(この理論間違ってないカナ)。少量のおかずで、飯をたっぷりとかきこむのかもしれない(ポーランドってご飯食べるのカナ)。
残りの肉は迷わずフライパンへ。バターとからまって焦げたところが、実に美味であった。
原材料名:豚肉(のはず)
内容量:455g(これは確かだ)
原産国:ポーランド(表記がまったく読めません)
って、"虚偽の報告"をしたことになるのは私か...
世の中便利になりまして、ポーランド語辞典が
オンラインでありました。
http://pingwin.hp.infoseek.co.jp/
全ては訳せませんでしたが、SZYNKAは豚もも肉、
内容物は大方、
豚肉、水、食塩、グルコース、卵白?、
豚ゼラチン、安定剤、グルタミン酸、香料など。
もう一缶自分用にあるのですが、
実は私まだ食べておりませんで、
熱海に行ったら夜飲むときのつまみにしよかと
画策中。
山程もらっちゃったウォッカと一緒にね。
楽しみです。
美味しくて美味しくて、この日は朝昼これだけ食べてましトン。
また食べさせてくれ。
Noritan
缶詰ブログはフィクションも多分に混じってます...ってことで。
ポーランド語辞典とは、すごい。おかげでこの先、このシリーズも何不自由なく書いていけますぜ。
熱海の夜は東欧ナイツとなるのでしょうか。ふふふ。
付加価値商品ツナクラッカーの記事とコメントとても興味深かったです。こういった商品は殆どがヨーロッパと北米向けで日本には残念ながら殆ど輸入されてないですね。
では、またお邪魔させていただきます。HP、頑張ってください。
缶詰工場に勤務されている。プロフェッショナルなのですね。
至らぬ部分がありましたら、(こっそり)ご指導下さいマセ。これからもよろしくです。
ライオンのごとく、食らいましょうぜ。