閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

本を読む、知識を得る こと。お勧め、読んで欲しい本

2024-07-01 07:45:42 | 日記

いきなり引用です。「知識はしばしば人間を独善的な思い込みから解放してくれます。色々な物事を知ることによって、いままで自分はこうだとしか思ってこられなかったものが、こんな別の可能性があるのかとか、こういう事も昔あったんだとか、こういうことを考えた人がいたなど一つひとつ知っていくことによって、私たちの心が開かれたり、囚われから解放されたりという事はもちろんあるので、知識というのは人間にとってもっとも大切にしなければいけないものだと百パーセント信じています」

 輩はかねがね「本を読まない者はおのれの知らざるを知らぬ馬鹿者」と言ってきた。「頭(ズ)が高い」とも。

「率直さはよいこと、あからさまはよいこと、欲望は解放されるべきであり、何かによって抑圧されることは、個人の自由の侵害である」という戦後の教育。

この先の都議選で顕著だった、また「撮り鉄」騒動でも見られる、このごろ極端に増えてきた、「自由」の履き違えについてもかねがね「分際」「弁え」という事を言ってきた。ことに日本では「金さえあれば」という(それも「小」のつく程度の大した金額ではない)風潮に異論を唱えないのはおかしい、とも。

 まだ半分しか読んでいないけれど書き留めておこうと思った。いつもの様に、輩が手にする本は「新刊」ではない。2004年刊「やりなおし教養講座」・村上陽一郎・NTT出版・4757140851。 のまだ前半から、である。  

此の「やりなおし教養講座」はぜひ皆さんに読んで頂きたい。

 例によって輩の文章能力は低いのでお伝え出来ないがまだまだ「同感」、あるいは以前から話してきていたことがそっくり この本の中にあります。小生の攻撃的慨嘆より 彼のやわらかい語りの方がなじみやすいでしょう。そして彼の該博な知識に驚かれることでしょう。 輩かくありたいと思いつつ齢を重ねてしまった。

 個人的には村上氏には大学で講師として来ておられてそれこそ「教養」講座を1年間受けたものである。US帰りの「新進気鋭の」という触れ込みであった。のち彼がcelloをたしなむことを知りなお近親感を持ったことである。

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古本屋の消長。その2

2024-06-28 23:22:56 | 日記

 先に古本屋のなくなることを書いた。 ここ数年で 北九州・福岡・大分熊本の各組合に十軒以上の組合への新規参入があったようだ。ようだというのは小生は同業者との付き合いが少なく、またほかの業者の消息にあまり興味がなくそれとなく聞こえてくる範囲でしか情報がないという事なのだ。そのうち数人は「市場」で見かけるのでそれとなくどんな風なのか見えてくる。

 ある新規参入者は どんな事情か知らないがマスコミにかなり紹介され新聞数社のほかTVの報道もあったそうだ。元、あるいは本職?はデザイナーらしく其転身もマスコミの興味を引くらしい。「新しい古本屋が開業」というのでどんな本を扱うのかにはわが方も関心あり。ところが、熱心に見たり入札したりする品は何と雑誌ばかり。それもまさに今はやりの半裸・全裸の写真満載の「ムック」類ばかり。台車一杯買って意気揚々である。これが「古本屋」と言えるのかとこちらが顔が赤くなる。 50年ほど前この業界に入ったころ、同世代の者が福岡・北九州で7・8人いた。それぞれ店の立地や様子は違っていたが、市場に出てくる品をまさに「満遍なく」見、触り、先輩に聞き、今の自前の店にすぐ役に立たなくともまず「古本の世界」を知ろうと努めていた。身の程知らずの品を買って笑われた(好意的に)ことも珍しくなかった。明治物・和本・紙物・文書・肉筆もの、なんでもとりあえず触ってみようとしたように思う。

 しかしながら このごろの参入者で古いものに関心を持つのは殆どいない。何かの折に品物を「これは○○だ」とか品物のことを触れると「何でそんなこと知ってんですか」「よくわかりますね」という。しかし自分で知ろうとはしない上に関心がないと本を捨ててしまうのだ。福岡の市場は不要の本を捨てていく場所を用意してあるが、ここが危ない。朝、市場の開始前にすでに捨てる者がいるのだが、ある時、「赤毛のアン・村岡訳」の綺麗なのが数冊あった、拾ってあたりを探ると10冊揃っている!しかも最初の版。せめて市場に出すくらいの「本」に関心を持てないのかとあきれてしまった。持って帰っての結果、半年を待たず一万円で売れた。今の業者はネットを知らない者はいない。積極的な関心はなくとも入手した品がどんなものかくらいは調べろよ、そして価格が判れば自分で売ればよいではないか、と思うのは「古い人間」。自分の関心がないものはまず眼中にないらしい。まさにタコ壺人間。 今福岡の市場で古いものに関心を寄せるのは小生を含め4・5人しかいない、しかも皆60歳以上。会場の8割は今はやりの半裸・全裸の写真満載の「ムック」類、アニメ・漫画・CDなどで埋め尽くされている。

 これらの品は今は大人気だが おそらく十年くらいしか続かないだろう。単なる「流行」に過ぎないと思う。されば、今のような出版業界を見ていると「古本業界」そのものが相当淘汰されるに違いなく、その時になって「不易」なる物に関心を持っても間に合わないだろう。「古本屋・背文字ばかりの学者なり」と言われていたが、今や背文字のある本が捨てられつつある。 新刊や娥なくなりつつあるのを嘆き、心配する記事は多いが、古本屋の現状を知る記者はいない。

 「本を読む人間がいないから売れない」こんなにはっきりしたことはない。

 今更嘆き節をいくら並べても時すでに遅し、少子化・人口源も同じだ。

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古本屋の消長

2024-06-02 22:39:02 | 日記

 このところ 廃業する店 そのつもりのはっきりしている店、幽霊的存在の店の話がよく聞こえてくる。斯くいう我店も 店じまいを視野に入れているのだが、 同世代、ほぼ同時に業界に入った仲間で今も生き残っているのは半数に満たない。生き残っているのも年齢からしてここ数年で消えざるを得ない者ばかりという古書業界の身の回りである。 いざ店を完全に片付けるというのは相当に大仕事で在庫の整理だけでも現在売れ残っている本を市場に出しても採算が合わないかもしれないのだ。九州に限らず 東京の神田の各市場の情報を見てもべらぼうな量の出品、毎週10トントラックでとかカーゴ10数台とか。その中のかなりの量が同業者の廃業によるものだという。

古本屋は借金をしていないのがせめてもの救いだと以前きいたことがある。この頃は営業機材のリースという曲者がいて途中で解約となると思いがけない出費を強いられる。我店ではある複合機のリースに警報機を加えた契約をしていたがこれがこの6月で仕舞える。

これが大変な損失であった。勧められて入れた複合機は大きすぎて邪魔で1年で引き取ってもらい、代わりに家庭用のコピー機が来たがこれで十分、しかし数年で壊れて今は自費購入の器械だがズット順調。警報機は2年6か月で故障、修理を頼んだら保障は2年で切れていて修理に2万円以上かかるという、これも修理しても我店には役に立たないとわかって壊れたまま放ってきた。結局何も役に立たなかったにもかかわらず契約だけは残ってそれがやっと来月おしまいになる。

 自前で買ったら数十万程度しか掛からなかったであろう器機に全く無駄に2百万円以上払ってきたことになった。 今はリースは一切受け付けていない。PCに関しては管理してくれる人と契約しているので周辺の事も相談に乗ってもらえ、必要なものは自前で買う事にしたのだ。

 本の仕入れは制限しているつもりでも市場でそれなりの物を見るとやはり手が出てしまう。 在庫は一向に減らない。通販はそれなり動いているが一冊づつの取引なのでなかなか嵩が減るところまで行かない。店だって同様でその上誰も入ってこないとあっては在庫が減るわけはない。百円均一と特価台だけは減ってガサガサ状態だが、安売りする本をそんなに用意しているわけはなく、500円千円という本を100円にはできない。それでも換金できた方がよいではないか、という人もいるが、安売りは本に対して失礼だと思うのだ。

 少し昔になるが、弊店の際在庫整理に苦労する話は聞いたことがなかったと思う。  「消長」と書いたが「長」の方は次の機会に書こう。

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松本清張 他

2024-05-06 07:38:57 | 日記

例によって輩の目にする(読む)本は「新刊」はまずない、

 1974年刊の松本清張「文豪」を読んだ。特に理由があってのことではなく、「たまには小説でも」と思った目の前にあったというだけのこと。 しかしながら読んでよかった。大方の本は大なり小なり何なりと「得るもの」がある。

 この度は松本清張という「小説家」の力量・才能・筆力などに改めて「すごい人」だなと思った次第。もとより輩は単なる「野次馬」に過ぎないので確信的なことは言えないが、坪内逍遥に関して何らかの情報を得たことに始まって彼一流の「詮索・探索」が始まり、周辺の人々を加えて「小説」に仕立てたものと思われるが、主人公の個人の一人称ではなく狂言回し的な人物を仕立てて組み立てた「小説手法」は見事だ。 これが「評論」専門の書いたものではおそらく味も素っ気もない「考証」になるだろう(実際にあるようだ)。 情報収集と咀嚼力は言うまでもないけれど、似たような司馬遼太郎との違いも面白いと言えるだろう。司馬の文章は一種独特の言い回しがあって彼のファンには素敵に思えるだろうけれども、輩にとってはそうでもない。一方松本清張の方は特に言い回しに癖があるとは言えないのではないか。同じような作家の吉村昭も(なんとも言えないが)独特の雰囲気(語り口とは言えないかもしれない)を持っている。

 山田美妙との関係も知らなかった。 明治半ばから活躍した人たちは文人に限らず「曲者」と言えそうな人たちばかり。 今や遊郭は無し、貧富の差もこのころほどではなし、肺病も少ないという状況の違いはあるけれども、今の「作家」で将来其個性を云々される、あるいは醜聞がかえって肥やしになったなどという(ある種の)力量を持ったのがいるだろうか。

 話変わって、この頃は「ライトノベル」なる名称があって(ひょっとすると日本の造語?)ごく軽い内容の「簡単に読める」、ことにネット配信で読める「小説」というのが流行っている(ようだ)。 「本屋大賞」という「店員がお勧めする」という「基準」も世の中ではうけているようでことに新聞がよく「宣伝」してくれているようだ。しかしその大賞もすでに21回を数えるそうだがではその受賞者で今に知られているのが何人いるか?もとより芥川賞だって受賞はしたもののその後消えてしまった人は少なくない。そのライトノベルは大方がすぐに「文庫版」になり我店にも流れてくるのだけれども、どれもこれもネットで見れば1円とか良くて90円 100円という状況。帯付きのピカピカであっても100円均一に入れるしかない物ばかり。はかばかしくとは言えないまでも売れてくれるので売りあげの足しとして一応助かるのだが まるで面白くない。  明日になったら忘れてしまうような「本」ばかりではいわゆる「本離れ」を助長すると思うのだがどうだろうか。

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音楽再発見の日々

2024-04-11 07:59:49 | 日記

  このところ「眼を通す」本・活字は相変わらず多いけれども大して本を読んでいない。

 一つには「眼」の具合である。老眼の進行具合とレンズがうまく合っていないのか、近場の物を見るのが 何とはなしに具合が悪い。  もう一つ原因(?)がある。 楽器を弾くのをやめてからは 夕食の後「ヒマ」になる、そして飲酒を制限された、となると読書の機会が増える、ハズであった。しかしそうはならなかったのがFM放送である。夜7時半頃からほぼ毎日あるクラシック音楽の番組を聞くようになった。そもそもBGM程度でさえその曲が気になる質なのだが、この時間の演奏はまず「聞き流し」ができない。譜面を用意してかじりつくわけではないけれど、「気になる・耳が離れない」 当然ながら「本を読む」ことはできない。場合によっては放送が終わっても余韻といえば聞こえがよいが、気になってそのことを調べたり、と色々。 おかげでこれまであまり聞かなかったピアノ・声楽、それに現代曲等も聞くようになって新発見多数。要するにこれまでいかに音楽を知らずに過ごしてきたかを思い知らされる時間になってしまったのだ。 音楽の知識が増えてもこの歳の小生になんの足しにもならないのになあ、と思いながらも止められない。 それぞれの演奏への感想は当然色々だけれど、時々「解説・司会者の感想」に本の場合と同じく「ちょっと変?」というのにも出くわすけれど録音して云々というまでの事もなし。  好みというのはかわるのものだが現在言えるのは「マーラー・ショスタコーヴィッチ」が嫌い、ことにシンフォニーはまず聞く気にならない。ショスタコーヴィッチがピアノ演奏がかなりの腕前だったことはこのFMで知ったことだがそれにしても交響曲の「ダサい」のはどうしたことかと。指揮者・井上道義が得意としていたのは知っていて幾度かは(放送で)聞いたことがある、にもかかわらず小生にとってはホボ雑音でしかない。これは理屈ではなくあの「音数・和音・響き」が小生の耳には耐えがたい。

 ところで吾輩は世間付き合いというものが上手とは言えなく、この街に友人と言えるは少なく、それも親しいというのは殆どいない。いても「本・歴史」に関して語り合える、まして音楽については皆無で、全く話相手がいない。もっぱら読書やこのような「日記風・メモ」を書いたり、たまには「投稿」したり。この街の音楽事情については絶望的、現在進行中でまだ生々しいので腹の中に収めているが、あきらめが先に立っている。美術館も同じ、「箱」があっても文化とは違うのだ。

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