以前数回来てくださっていた某大学の教授が弟子の助手?と共に来店された。コロナのせいで 2年ほど大牟田にこれなかったという事だ。
わざわざ我店に、という事は言わずと知れる「炭鉱」関係の研究者である。 今回は連れのお弟子さんの方が 我が家の棚を喜んでもらってよかった。教授を含め、文系の研究者の目に留まるものは概ね似ていて、数回来店すればもう買うものがないという事になりがちです、そもそもそう沢山の種類の文献・資料が転がっているわけはないのだから。 このお弟子さんは文系ではあっても鉱山の採炭稼働・機械周辺の研究とあってちょっと見る目が違っていた。挨拶もそこそこに棚に張り付いて「是も・あれも」と ものの数分で10点ほど「是いただきます」 これまでほとんど動かなかった技術に関する研究誌や報告書。わが方ももとより「動く道具」への関心があるので意図的に集めて、「意地で維持」してきた品々で、売れてくれるのはうれしいけれども、一方で思うのは さて同種のものを再度入手できるか?
今回に限らず炭鉱関係の来客に以前から「資源の枯渇」を訴え・お伝えしている。閉山後20年を超え、炭鉱に関係した人や機関はすでに周りにいなくなって、あそこにはまだあるかもしれない、という目途が立たなくなっていて、要するに資料を入手できる可能性がなくなってきている。 大手、中小を、あるいは私家版を問わず、「出版されたもの」であれば少なくとも数百、大手であれば数千冊は世に出回っているのだからそのうちに巡り合える可能性はある。しかしその本や論文を書く材料、元になる資料となるとそうはいかない。
このところ店への来客が激減していることは以前から書いています。今回のお二人のお買い上げは我店の「店頭販売」の数か月分の金額です。
見る人が見たらこのような結果になる「物」がこの店に並んでいるのだぞ、と大牟田の人たちに訴えたい。「馬耳東風」「犬が星を見るような」喩えは他にもまだありそうですが浅学で思いつかない。
教授のほうのこれからの研究は「産児制限・人口中絶」という事だ。昭和30年ころから望まれない子供の増加が問題になっていたそう、ことに注目されるのは各単産ごとの教育・普及だったそうで、これに特に炭組は反対した、理由は「児童手当を減らすための方策だ」という、一方で主婦連中にとっては切実な話で、組合の反対の中でも教育を続けた、という事でその関連の資料が欲しい、と。
これは難しい!時すでに経験者はすでに80歳を超えているだろう、主婦会の資料と言われてもねえ。わが方としてもこれまで思いもしなかった方面のことで返答のしようもない。お手伝いできるかどうか、まったく楽観できません。 一口に「炭鉱関係」といっても間口は広い。
本当にうれしいけれども困った、という話です。