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緊急事態か?リーマン・ショック前夜に近付く金融市場

2011年11月24日 07時20分09秒 | 経済
金融マーケット全体が「リスクオフ」の方向で大きな動きを見せている。そんな中で、心配な記事がロイターで配信された。世界中の金融機関でドル不足が起きており、ドルを調達するのに上乗せするスプレッド(金利)の水準がリーマン・ショック以来、最大になっている状態が続いている。いわゆるリーマン・ショック時に起きた「カウンターパーティー・リスク」や「流動性リスク」が再び顕在化しているということだ。

わかりやすく言えば、世界中の金融機関が資金を融通し合って金融市場は機能しているわけだが、欧州債務危機がイタリアやスペイン、フランスまで拡大しつつある中で、互いを信用できなくなり、疑心暗鬼になっている状態だ。そんな状態の中で、リスクマネーが急速に「リスクオフ(リスクのある金融資産を手仕舞って安全資産にシフトしようとする動き)」を進めようとしている。リーマン・ショックでも明らかになったことだが、いざという時にはリスクマネー、リアルマネーを問わず「ドル資産=安全資産」に回避する傾向が強い。

そうした動きは金融マーケットの中でも、はっきりと形になって現れており、たとえば短期のドル資金を調達するのに最も重要な取引である「為替スワップ取引」の流動性が急速に落ちている。短期間の資金調達では、もっとも一般的な短期金融市場だ。

さらに、ロイターも指摘しているが、金融市場で「ユーロが余り、ドルが不足している」状態が強まっている。インターバンク(銀行間)市場での「ユーロ/ドル」の3カ月物の先物のスプレッドが、EURIBORとLIBORの金利差よりも137ベーシスポイト(bp)も高くなっており、ドルの資金調達コストが上昇していることを示している。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-24294320111122

こうした背景には、いうまでもなく欧州債務危機があるのだが、この1週間で他にもさまざまなリスクが頭をもたげ始めている。ひとつには、米国で財政赤字削減のための協議が超党派で行われていた特別委員会が決裂したこと。米国債の格付けは、S&Pが「AAA」から「AAプラス」に一段階引き下げた後も、下落方向で見直す「ネガティブ」を継続しており、今後1年から1年半の間に再び格下げがある可能性を示唆している。


そして、もうひとつの懸念は中国に対する様々なネガティブ情報が出てきたことだ。たとえば、中国人民銀行の金融政策委員が「2012年に中国が貿易赤字になる可能性がある」と発言している。さらに、中国の急速な経済成長の原動力だった中国国内の不動産にバブル崩壊の懸念が出てきた。ソフトランディングできるかどうかで、世界は大きく変動する。

第3の懸念が、これが実は一番怖いのだが、現在最も怖いのは第2のリーマン・ブラザーズを出してしまうことだ。周知のように、FRBは様々な事情からリーマン・ブラザーズだけを救済しなかった。その代償として、世界経済は信用収縮を起こし、その信用収縮を回復させるために世界各国は莫大なコストを支払った。第2のリーマンを出すことだけは避けなければいけないのだが、大切なのは金融当局者の適切な判断と決断力だ。

そこで心配なのがECB(欧州中央銀行)新総裁の力量だ。以前、ユーロ圏が抱えるいくつかのリスクの中に「ドラギ新総裁」を指摘したことがあるが、ECBが積極的にイタリアやスペインの国債を買い入れていか行かないと金利が上昇してしまい、収拾不可能になってしまう。

いずれにしても、いま世界の金融マーケットは「リスクオフ」に進んでいる状態。こんなとき、えてして日本の個人投資家はうっかり「リスクオン」にしてしまい、リスクのある金融市場に投資してしまう。その結果として、損失を出してしまうことが多かった。日本人の資産が奪われないためにも、金融市場のトレンドにはあまり逆らわないことだ。少なくとも、逆張りをするなら底値を確認してからだろう。 岩崎博充