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ソフトバンク、孫正義の暴挙or英断?30万円“感情持つ”ロボット販売に秘めた野望

2015年06月26日 05時37分32秒 | お役立ち情報
 ソフトバンクは6月20日、人型パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」を一般向けに販売開始した。6月中の販売予定台数とされた1000台は、受付開始から1分で完売した。感情を認識するだけでなく、脳のメカニズムを基に感情を再現し、自身も感情を持つなど新しい進化を遂げたペッパーだが、ソフトバンクはその先に何を見据えているのだろうか。

●ようやく一般向け販売開始

 ソフトバンクがペッパーを発表したのは昨年の6月。その後、開発者向けに限定販売が行われ、またネスレなどいくつかの企業に対しても提供され、接客やテレビCMに起用されるなど、大きな注目を集めてきた。

 一方で、一般向けの発売に関してはなかなか決まらなかった。発表当初は今年の2月より販売を開始するとしていたが、2月の決算発表会でソフトバンク社長の孫正義氏は「一般向けの販売は夏頃になる」と、延期を明らかにした。そのため、一般向け発売そのものを危ぶむ声もあった。

 そんな中発売されたペッパーの料金を見てみよう。本体価格が税抜19万8000円というのは発表当初と変わっていないが、ペッパーは情報をクラウドで処理するため、クラウド利用に加入が必須となっている「基本プラン」が36回の割賦払いで毎月1万4800円となっている。さらに事故や故障などに備えた「保険パック」に加入すると、36回の割賦で月額9800円となる。


 また法人向けに、専用のプログラム「Pepper for Biz」を今秋に提供予定という。購入はハードルが高いと考える企業向けに、時給1500円で“アルバイト派遣”する仕組みも設けるとのことだ。

●ペッパーの発売が延期された2つの理由

 しかしなぜ、ペッパーは一般向けの発売が延びることとなったのだろうか。6月18日の発表内容から察するに、大きく分けて2つの理由があると考えられる。1つは、ペッパー自体の機能強化だ。

 ペッパーは発表当初、人の表情や声などから感情を推測し、感情に応じた対応をしながら学習していく感情認識機能を搭載したロボットとして紹介された。だが今回、ペッパーの新たな目玉として「感情エンジン」というものが追加されている。

 これは、人間の脳で起きている、ホルモンの分泌による感情発生のメカニズムをアルゴリズムとして取り入れ、コンピューターで再現したもの。利用者の反応や本体のセンサーから得た情報、さらにインターネット上の情報などを基に“好き”“きらい”などの感情が生成され、その感情に基づいた反応をするというのが、主な仕組みとなるようだ。この感情エンジンの搭載により、ペッパーは人の感情を読み取るだけでなく、そこから自分が感情を持ち、より人間らしい反応をするようになったわけだ。

 そして感情エンジンの開発に関して、孫氏は「昨年の発表会当日の夜中2時に目が覚めて、感情エンジンのベースとなる仕組みを思いつき、夜中に電話をかけてエンジニアに(感情エンジンに関する技術の)特許を出願しておくよう指示した」と話している。それゆえ感情エンジンの開発も、ペッパーの発表以降急ピッチで進められたと考えられ、目玉機能の開発に時間がかかった分、発売も後ろ倒しされたと推察される。

 もう1つの理由となるのが、生産上の問題だ。ペッパーは可動部分が多く、従来のIT関連機器と比べ生産には手間を要する。さまざまな機器の大量生産実績がある受託製造大手の鴻海科技集団(フォックスコン)が製造を担当しているとはいえ、生産技術の確立やラインの確保などを考えると、人型ロボットの大量生産には時間がかかるのは確かだ。

 ペッパー自体は企業を中心として高いニーズがあるというが、一般販売にこぎつけるには、安定した生産体制の確立が大きな課題だ。そこでソフトバンクは、ロボット事業を統括するソフトバンクロボティクスホールディングスに、フォックスコンから出資を受け入れることで量産に力を入れるべく関係を強化している。ちなみにフォックスコンと同時に、ソフトバンクが出資しているアリババからも新たに出資を受け入れ、世界展開も視野に入れている。グループ全体でロボット事業を強化する方針を見せている。

●ロボットの“頭脳”を掌握するのが狙いか

 ようやく発売にこぎつけたペッパーだが、約20万円の本体価格に加え、保険パックも含めると年間約30万円もの維持費用がかかることを考えれば、一般販売がなされたとはいえ、誰もが容易に買えるものではない。それゆえ購入層がかなり限定されるのは確実で、販売も店頭やイベントなどでの接客などを目的とした、法人向けが主体になると考えられる。

 孫氏が「現在でも製造コスト以下で販売している」と話す通り、ハードや機能面を考慮するならば、これ以上安価に提供するのが難しいのも理解できる。それだけに、ペッパーを積極販売して一般家庭に普及させようというのは、現時点ではやや無理があるだろう。

 もっともソフトバンク側も、そうしたことは承知の上でペッパーの発売に至ったといえるだろう。実際孫氏は、ロボット事業は「5年くらいは事業全体の売り上げの1割に満たない程度」と話しており、短期的に収益を上げる事業とは考えていないことがうかがえる。

 では、ソフトバンクは何を目指しているのかというと、それはペッパー、ひいてはロボット事業を同社の主力事業へと育てることだ。孫氏は「30年後にはロボットの数が、地球上の人口を超える可能性があると思っている」と話しており、技術の進歩によって今後さまざまなかたちでロボットが生活の中に入ってくると予測しているようだ。

 その上でソフトバンクは、従来の日本企業が重視してきたロボットのハード部分ではなく、その頭脳となるソフトウェア部分に力を入れることで、今後の拡大が見込まれるロボット事業に取り組む方針を示している。現在のスマートフォンにおけるアップルやグーグルがそうであるように、プラットフォームやクラウドなどソフトウェアの基礎部分で主要なポジションをいち早く確保することで、ハード・ソフトを含めたロボット業界全体での支配力を強めたいというのが、ソフトバンクの狙いと見ることができそうだ。

 そうしたロボットの頭脳開発を進める上での足掛かりとして、ソフトバンクはペッパーの商用化で先手を打ち、早い段階からデータと技術の蓄積に乗り出したといえる。それだけに同社のロボット事業は、短期的なペッパーの販売動向よりも、中長期的にiPhoneやAndroid同様の成功体験を得られるかどうかを注視して評価する必要があるといえそうだ。
(文=佐野正弘/ITライター)

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