工藤公康監督就任1年目の今季、ソフトバンクは2位の日本ハムに10ゲーム以上の差をつけ、パ・リーグを独走した。優勝を目前に控えた今、あらためて"工藤野球"とは何だったのかを検証したい。ホークスOBでもある解説者の本間満氏に話を聞いた。
これまでのホークスというのは、王貞治監督(現・会長)の時代からレギュラーはある程度固定され、その選手たちでシーズンを戦うという野球でした。当然、レギュラーが固定されると安定した戦いができますし、それがホークスの強さでもありました。
しかし工藤監督は、中心メンバーは固定しつつも、状態のいい選手を積極的に起用し、その選手たちもしっかりと期待に応える活躍を見せてくれました。選手側にしてみれば、試合に使ってもらえることでモチベーションが上がりますし、自ずと競争意識が芽生え、それが選手層の厚さへとつながっていったのだと思います。
今シーズン、これまでチームの主力で2013年に首位打者を獲得した長谷川勇也はほとんど試合に出ていません。そんな実績のある選手がいなかったのにもかかわらず、まったく戦力ダウンを感じさせなかった。これまでホークスは選手層が厚いと言われてきましたが、今年ほどそれを感じたシーズンはありませんでした。
打線に目を向けると、今シーズンは3番・柳田悠岐、4番・内川聖一、5番・李大浩(イ・デホ)、6番・松田宣浩の4人はほぼ固定して戦いました。その中で注目したいのが、柳田を3番に置いたことです。足のある柳田が3番に入ることで、併殺打が減ります。ランナーが残ったところで内川がつなぎ、続く李大浩が還す。今年はそんな場面を何度も見ました。
昨年、李大浩は4番打者として打率.300をマークしながら、打点は68しかありませんでした。それが今年は現時点(9月15日現在)で93もあります。いかにこの打線が機能していたかを証明する数字だと思います。
そうして中軸は固定しつつも、1、2番には調子のいい選手、相手との相性を見て入れる。そうすることで、より多彩な攻撃が可能になりました。ただバントで送るのではなく、エンドランや盗塁など、足を絡めた攻撃もできる。投手にとって何をされたら嫌なのか、投手出身の監督らしい攻めを見せていました。ただ打ってランナーを還すのではなく、じわりじわり相手にプレッシャーをかけていく。まさに工藤野球の真骨頂と言えると思います。
一方の投手陣は、絶対的なエースがいるわけではなく、昨年のシーズン終盤に大活躍した大隣憲司がシーズン途中で離脱し、メジャー帰りの松坂大輔も一度も一軍のマウンドに上がることはなかった。正直、苦しかったと思います。
それでも工藤監督らしいと思ったのは、「ここで交代かな」と思う場面で続投のケースが結構あったことです。長いシーズンを戦う上で、目の前の試合に勝つことは大事なことですが、投手を育てることも重要になってきます。
ホークスのように強力なリリーフ陣を擁すると、つい継投に頼りがちになってしまいます。そうした戦いをシーズン序盤から続けていくと、リリーフ陣も疲労がたまってきますし、8月、9月の戦いが厳しくなります。それを避けるように、特に序盤は先発陣にイニングを投げさせていたと思います。それによって武田翔太が一本立ちし、寺原隼人も苦しい台所事情を支えてくれました。
投手陣も野手同様、調子のいい選手を積極的に起用したことで、新しい戦力が生まれました。バリオスや二保旭がまさにそれで、結局、1年間を通して投手陣全体が不調に陥(おちい)ることがありませんでした。投手陣が安定することで打者にも余裕が生まれ、落ち着いた試合運びができた。
これまでもホークスは、他球団がうらやむ選手層の厚さを誇っていましたが、今年はレギュラーと控えの力の差がほとんどありませんでした。だから、誰が試合に出てもホークスの野球ができる。競争をあおることで選手個々のレベルがアップし、それがチーム全体の底上げにつながった。それを実践したのは、間違いなく工藤監督だったと思います。
スポルティーバ●文 text by Sportiva
これまでのホークスというのは、王貞治監督(現・会長)の時代からレギュラーはある程度固定され、その選手たちでシーズンを戦うという野球でした。当然、レギュラーが固定されると安定した戦いができますし、それがホークスの強さでもありました。
しかし工藤監督は、中心メンバーは固定しつつも、状態のいい選手を積極的に起用し、その選手たちもしっかりと期待に応える活躍を見せてくれました。選手側にしてみれば、試合に使ってもらえることでモチベーションが上がりますし、自ずと競争意識が芽生え、それが選手層の厚さへとつながっていったのだと思います。
今シーズン、これまでチームの主力で2013年に首位打者を獲得した長谷川勇也はほとんど試合に出ていません。そんな実績のある選手がいなかったのにもかかわらず、まったく戦力ダウンを感じさせなかった。これまでホークスは選手層が厚いと言われてきましたが、今年ほどそれを感じたシーズンはありませんでした。
打線に目を向けると、今シーズンは3番・柳田悠岐、4番・内川聖一、5番・李大浩(イ・デホ)、6番・松田宣浩の4人はほぼ固定して戦いました。その中で注目したいのが、柳田を3番に置いたことです。足のある柳田が3番に入ることで、併殺打が減ります。ランナーが残ったところで内川がつなぎ、続く李大浩が還す。今年はそんな場面を何度も見ました。
昨年、李大浩は4番打者として打率.300をマークしながら、打点は68しかありませんでした。それが今年は現時点(9月15日現在)で93もあります。いかにこの打線が機能していたかを証明する数字だと思います。
そうして中軸は固定しつつも、1、2番には調子のいい選手、相手との相性を見て入れる。そうすることで、より多彩な攻撃が可能になりました。ただバントで送るのではなく、エンドランや盗塁など、足を絡めた攻撃もできる。投手にとって何をされたら嫌なのか、投手出身の監督らしい攻めを見せていました。ただ打ってランナーを還すのではなく、じわりじわり相手にプレッシャーをかけていく。まさに工藤野球の真骨頂と言えると思います。
一方の投手陣は、絶対的なエースがいるわけではなく、昨年のシーズン終盤に大活躍した大隣憲司がシーズン途中で離脱し、メジャー帰りの松坂大輔も一度も一軍のマウンドに上がることはなかった。正直、苦しかったと思います。
それでも工藤監督らしいと思ったのは、「ここで交代かな」と思う場面で続投のケースが結構あったことです。長いシーズンを戦う上で、目の前の試合に勝つことは大事なことですが、投手を育てることも重要になってきます。
ホークスのように強力なリリーフ陣を擁すると、つい継投に頼りがちになってしまいます。そうした戦いをシーズン序盤から続けていくと、リリーフ陣も疲労がたまってきますし、8月、9月の戦いが厳しくなります。それを避けるように、特に序盤は先発陣にイニングを投げさせていたと思います。それによって武田翔太が一本立ちし、寺原隼人も苦しい台所事情を支えてくれました。
投手陣も野手同様、調子のいい選手を積極的に起用したことで、新しい戦力が生まれました。バリオスや二保旭がまさにそれで、結局、1年間を通して投手陣全体が不調に陥(おちい)ることがありませんでした。投手陣が安定することで打者にも余裕が生まれ、落ち着いた試合運びができた。
これまでもホークスは、他球団がうらやむ選手層の厚さを誇っていましたが、今年はレギュラーと控えの力の差がほとんどありませんでした。だから、誰が試合に出てもホークスの野球ができる。競争をあおることで選手個々のレベルがアップし、それがチーム全体の底上げにつながった。それを実践したのは、間違いなく工藤監督だったと思います。
スポルティーバ●文 text by Sportiva
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