「見た目力アップ」
● 子どもでも見た目で評価する
近年の発達心理学では、乳幼児も含めて子どもが実に賢いものの見方や判断や行動をすることが知られています。本稿に関係する、人物の魅力度の第一印象も、7歳くらいになると、ほぼ大人と同じ基準を使うようになることを示す研究もあります。
となると、たかが相手が子どもだから、は通用しない。大人を相手に見た目を設計するのと同じ配慮が子どもに対しても要求されることになります。
●見た目の良さは大切
手元に「ファースト・インプレッション」(クラインク著、福屋武人監訳、有斐閣)という本があります。その本の冒頭に、見た目がいかにポジティブな効果を持つかについての心理実験の結果が紹介されていますので、そのいくつかを紹介しておきます。
○魅力度高いと判断された人は、社会的に望ましいとされる性格を持つと評定されました。さらに職業上の成功、結婚への適性、生活全般の満足感も高いと評定されました。
○女性が魅力的にメイクした場合とそうでないメイクをした場合とでは、男性の反応がかなり異なります。
いずれも写真を見ての第一印象の判断です。人物の魅力度は、このあとに続くさまざまな情報ややりとりによっても形成されることは言うまでもありません。
● 第一印象における直感的判断
人間の情報処理は重層的になっています。基盤にあるのは、
・ 無意識で
・ 自動的で
・ 迅速な
処理を行います。それに重なるようにして
・ 意識的で
・ 制御的で
・ 時間をかけた
処理が乗っています。前者を裏道の処理、後者を表道の処理と呼ぶ人もいます。
第一印象での人物情報の処理のほとんどは、裏道で行われます。そこでの処理結果は、一つは、もっぱらその人物に対する好悪として、さらに、その自分人物についてのおおまかな印象として、表道での処理を制約します。
たとえば、好ましそうな人だから、もう少し人物を知りたいとか、あまり人が良さそうではないので、深入りは止めておこうとなります。
なお、裏道処理による第一印象の制約が強すぎると、その人物に対する思い込みが発生して、表道の情報処理をゆがめることになります。「こんなに魅力的な人が悪い人のはずがない」となってしまい、詐欺の餌食になってしまいます。
なお、日本では、初対面では、名刺が交換されるのが常です。そこにある情報は、もっぱら表道で処理されます。好ましい人という第一印象と、名刺からの情報とに整合性があれば、関係を深める方向に進みます。不整合なら「さて、どうしよう」となります。
● 見た目の良さを作り出すもの
身体的特徴、動作、服装の3つです。それぞれ、何をもって見た目がよいかは、かなりのところまではっきりしています。
一つは、身体的特徴、とりわけ、顔です。いうまでもなく女性なら美人、男性ならイケメンです。化粧技術が日本では格段に進歩してきています。化粧品コーナーでのカウンセリングをお勧めします。
2つは、表情や仕草などの動作です。無表情はもってのほか、あなたと仲良くしたい、話したいとの気持ちを表情と仕草で示すことになります。とりわけ、子どもは表情や仕草を読み取る天才です。したがって、作った表情や仕草は無用ですし、ただちにその嘘を見抜かれてしまいます。
最後が服装です。TPOを心得ておけば、どんな服装でも見た目が良いことになります。流行にもちょっぴり気を配れれば言うことなしです。
なお、相手が中高生になると、教師の見た目は、自分の将来の見た目を設計する暗黙のモデル(師範)になっていることが多いと思います。いささかもおろそかにしなほうがよいと思います。いつもジャージと運動靴では、モデル効果をいささかなりとも期待できことになります。
● なぜ、見た目のよさは人をひきつけるのか
4つほど理由があると思います。
一つは、見た目のよさは、芸術作品を見たときのように、理屈抜きで気持ちをポジティブにしてくれます。
2つは、学習効果です。TVドラマやCMに出てくる見た目のよいタレントの振舞いを朝昼晩と見せつけられれば、黙っていても見た目のよさの効果を学習してしまいます。
3つは、後光(ハロー)効果です。見た目のよさは、性格や能力などのほかの点もすばらしいとの判断も生じやすいので、一層、ひきつけられることになります。
4つは、自分のために見た目を気にしてくれたとのメッセージを与えことです。デートの相手がとんでもない格好であなた目の前に現れたら、どうでしょうか。
● 見た目が悪い人の勝負所
まず、第一は、第一印象で勝負しないことです。しかし、第一印象が大事という認識はきちんともっておいたほうがよいと思います。「人は見かけにあらず、内容が勝負」ではありますが、内容をわかってもらうには時間も手間隙もかかります。第一印象もおろそかにしないに越したことはありません。
幸いなことに、教師ー子ども関係は、長期間にわたって築かれますので、第一印象にはそれほど強くは依存しないし、第一印象をさまざまな形で修正してもらえる機会があります。。
その内容を知ってもらう前に3つほど、おすすめのコツを紹介しておきます。
一つは、相手との接触回数を増やすことです。接触頻度が多いほど好感度が増すという単純接触効果が知られているからです。
2つは、傾聴効果の活用です。相手の話をじっくりと聞く姿勢です。相手からの好感と信頼をうることができます。
さらに、自慢話しや押し付けにならない程度の自己情報の提供です。相手との情報の共有こそ信頼関係の基礎になります。
本文のみで 139行
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竹内一郎著「人は見た目が9割」(新潮新書)と
メラビアンの法則(の誤解)に触れないわけにはいかないであろう。