養護教諭のコミュニケーション―子どもへの対応、保護者・教師間連携のポイント | |
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少年写真新聞社
3-8)いじめられている子どもとのコミュニケーション いじめられている子どもは、いじめている子どもとの2者関係のみでいじめられているのではないことがわかっています。学級や学年からいじめを受けることもあるため注意を要します。
ここがポイント 「早期発見」「安心・安全の確保」
いじめの4層構造 森田・清永(1986)によると,いじめは4層構造であることがわかっています。
被害者…いじめられている子 加害者…いじめている子 観衆 …いじめをはやし立て面白がっている子(いじめを強化する存在) 傍観者…見て見ぬふりをしている子(いじめを支持する存在)
観衆と傍観者の存在は,いじめを助長したり、いじめを抑止する(いじめられている子を守る)重要な要因だと言われています。しかし,多くの子ども達は,いじめをストップさせようと声をあげると,次のいじめの標的になることを恐れています。したがって,内心は心を痛めながらも見て見ぬふりをすることになります。 このようにいじめられている子どもは,観衆や傍観者からも同時にいじめられていることになります。時に自殺に至ることもあります。
いじめの動機 警察庁の調査によると、いじめの動機は「いい子ぶる・なまいき」「力が弱い、無抵抗だから」「よく嘘をつく」「態度動作が鈍い」といった理由が挙げられています。 発達障害がある子どもがターゲットになりやすいのはここに起因します(P○参照)。
いじめによる心の傷 いじめられた経験は,思いのほか大きな傷跡になります。ある精神科医は,大人になってうつ病などの精神疾患にかかった人の多くは,思春期前後にひどいいじめを経験していると言っています。いじめはそれほど心に大きな傷を与えます。 したがって,早期に発見し早期介入を行い,ケアをするという手順を踏みます。
早期発見のために いじめ発見の一方法 ・保健室前をうろうろしている子どもに声をかける (例)「中に入って少しお話しでもしようか?」 ・顔色の悪い子ども,欠席がちな子どもに声をかける (例)「ちょっと調子悪そうだね。体調について聞かせてくれる?」 ・保健室を訪れる子ども達から何気なく人間関係の情報を得る (例)「アイさん最近ここに来ないね。どうしているのかな?」 ・休み時間や部活動中の様子を見回る(発見と抑止) ・日頃から職員や保護者から情報を得られるような関係を構築しておく ・アンケートを活用する (文部科学省のHPに参照)
コミュニケーションのとり方 いじめが発見されてもいじめられている子どもがいじめの全容を話さないのは、話したことでさらにいじめがエスカレートすることを恐れていることがほとんどです。危機対応の原則で関わると効果的です。
安心・安全の確保 ・発見したら最初にすること…①あなたは悪くない,②どんな動機があってもいじ めることは悪いことである,という正義をはっきりと伝えます。 ・事実関係を把握します。深刻さによっては緊急避難先を確保します。 (例)休み時間は保健室で過ごすなど。 ・子どもの不安や辛さに対するカウンセリングを実施します。守られていると実感 できることがコツです。保護者へも状況を伝えます。 ・「いじめた子ども」に対し、今後どのようにして指導していくかについて子ども や保護者へ説明し,同意を得ながら介入します。子どもがのぞまない関わりはし ない方が無難です。うまくいかなかった時に,「人間不信」になる可能性があり ます。死ぬしかないと思い詰めることがありますから注意を要します(P○自殺 の項を参照)。学級担任や学年教師,保護者,スクールカウンセラーなどの専門 家とも相談しながら,慎重に対応していきます。 |