「文書で伝える」
●かわるから伝えるへ
これまで3回は、コミュニケーション事態を想定した、いろいろの「わかる」について考えてみた。言うまでもないが、コミュニケーションをより良質のものにするには、わかるだけででは不十分で、わかったことをいかに受け手に伝えるかも大事である。「わかって伝える」。これがコミュニケーションの真髄である。
さて、今回から3回、伝え方について、コミュニケーションのメディア(媒体)ごとに考えてみる。
● 受け手を意識した文書作りを
第7回で取り上げる聴衆を目の前にしたプレゼンテーションと違って、文書による伝達は、受け手がみえない。そのために、文書は、つい独りよがりのものになりがちである。
その文書は、誰がどのように読むのかに執拗に思いをはせて作る必要がある。
まずは、内容からして、低学年向けと高学年向けでは、たとえば、同じ「風邪の流行」をテーマにした文書にしても、表現を変える必要がある。
作り方にしても、たとえば、低学年には文字を減らしてイラスト中心に、といった工夫が求められる。
●メリハリ表現を
図の右側に示したのは、バスの非常口の開け方(実例)である。しっかりと読めば、内容的には正確で情報的にも充足している。しかし、いざというときに、こんな表示を読んでもらえるであろうか。
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図 別添
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かりに文章(文字)ばかりで書かれた文書であっても、図左に示したように、メリハリのある書き方をすれば、それなりの表示効果を期待できる。
メリハリ表現とは、意味のまとまり(区別化)と大事さの程度(階層)が、一目でわかるようにしたものである。
● 適切なタイトルを
一定の長さの文書には、タイトルが付ける。そのことは誰もが知っているのだが、どんなタイトルを付ければよいかについては、意外に無頓着なところがある。
まず、タイトルは、文書をわかるやすくする要(かなめ)であることを知る必要がある。
図に示した文書を読み、これが何のことを述べたものか考えてみてほしい。
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* 別添の文章を適当な長さのところまで
* 1ポイント小さく
* ***
この文書にタイトルを付ければ、たちどころに内容が理解できるようになってくる。
どうしてこういうことになるかと言うと、タイトルを見ると、それに関する頭の中の知識が活性化するので、文書に書かれた内容が取り込みやすくなったからである。
さらに、タイトルの内容も大事である。
多くのタイトルは、マクロで抽象的なものになりがちである。「風邪の予防」「風邪をひかないように」といった類である。これはこれで一定の効果はあるが、それよりも、「うがいで風邪を防ごう」「冷えすぎによる風邪に注意」のように、その文書で言いたいことをずばりタイトルにもってきたほうが、タイトル効果は大きい。場合によっては、タイトルだけしか読んでくれない人にもそれなりの効果がある。
● 小見出しを
小見出しも使うようにしたいものである。
一定の長さの文書になると、内容的にもいくつかのユニットに分かれる。その分かれ目に小見出しをいれるのである。
たとえば、本稿を見てほしい。見開き2ページの中に、小見出しが**つ。タイトルを見て、小見出しを見ると、ほぼ内容全体の見当がつくはずである。
ただし、あまり多く小見出しを入れると、内容が分断されてしまうので要注意である。
なお、タイトル、小見出しをつけるようにすると、書くときにも、より一層、内容の精選をするようになる副産物もある。
● 読ませる工夫も
文書は作る側からすると、かなりしんどい仕事になる。そのためもあってか、自分の作った文書は受け手に読まれて当然との思い込みをしがちである。
時には、ぜひ、この文書は読んでほしいとの気持ちを文書に込めることも必要である。それには、広告宣伝で使うアイドマの法則を知っておくとよい。
Attention;目立たせて注意を引く
例;大事なところに色を付ける
Interest;興味、関心、利益に訴える
例;安さでは負けません
Desire;欲求に訴える
例;こんなにきれいになります
Memory;覚えてもらう
例; 何度も繰り返して配る
Action;行動してもらう
例;先着順です