心的回転(mental rotation>
人が物を見るとき、どのように見ているかを説明するのに心的回転(Mental rotation)という言葉が使われます。人は物を見るときその物を頭の中に思い浮かべて、それを回したりして同じかどうか考えます。
たとえば、ある実験で、図形を回して、違う方向から見たものか、鏡に映したようにまったく逆の図形を回したものか考えるというものがあります。このとき、回した角度が大きいほど分かりにくくなるということが分かりました。これは頭の中で思い浮かべたものを同じ速さで回してみて、同じかどうか考えているということを表しています。この実験をしているときに聞いてみたら、そうやって物を見ていると自分でも分かっている人もいました。
よって、物を見て頭で考えるときは本物の物を回してみるように頭の中でも同じように回しているといわれています。(TT)
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突然ですが、あなたがいつも使っているマグカップを思い浮かべてみて下さい。きちんと思い浮かべられましたか?次にそれを右回りに180°回転させて下さい。できましたか?最初に思い浮かべた時と比べ、マグカップの柄は反対向きに、取っ手も反対側になっているはずですね。
今、あなたは絵に描いたわけでもないのに、きちんとマグカップを思い浮かべて、さらに回転させることもできたわけです。このように、何かの形を心の中でひとつの向きから別の向きへと回転させていくことを心的回転と呼びます。
さっき心の中でマグカップを回転させた時のことを思い出してみて下さい。「180°回転させて」と言われた時、いきなり180°ひっくり返ったマグカップが心の中に浮かびましたか?そうではなく、マグカップは30°,60°,90°,120°,150°,180°と少しずつ順番に右回りに回転していったはずです。これが心的回転の特徴です。心の中では、実際にマグカップをひっくり返す時と同じように、途中を飛ばさずに全ての角度を通って回転させていくわけです。つまり、180°回転させるには90°回転させる時より時間がかかることになります。(SK)