見た目力アップ
●見た目の良さは大切
手元に「ファースト・インプレッション」(有斐閣)という本があります。その本の冒頭に、見た目がいかにポジティブな効果を持つかについての心理実験の結果が紹介されていますので、そのいくつかを紹介しておきます。
○魅力度が高いと判断された人は、社会的に望ましいとされる性格を持つと評定されました。さらに職業上の成功、結婚への適性、生活全般の満足感も高いと評定されました。
○女性が魅力的にメイクをした場合とそうでないメイクをした場合とでは、同一女性に対する男性の反応がかなり異なります。
いずれも大人についての写真を見ての第一印象からの判断です。人物の魅力度は、このあとに続くさまざまな情報ややりとりによっても形成されることは言うまでもありません。
●第一印象における直感的判断
人間の情報処理は重層的になっています。基盤にあるのは、「無意識で、自動的で、迅速な処理を行なうルート。それに重なるようにして、「意識的で、制御的で、時間をかけた」処理を行うルートが並行しています。前者を裏道の処理、後者を表道の処理と呼ぶ人もいます。
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図 連載からの転載
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第一印象での人物情報の処理のほとんどは、裏道で行われます。そこでの処理結果は、1つは、もっぱらその人物に対する好悪、あるいは、ポジティブ評価かネガティブ評価のいずれかになります。これが、後の対人関係の方向性、つまり、積極的につきあうか、それとも引いた付き合いをするかを決めます。
もう一つは、その人物についてのおおまかな印象の形成です。名刺にある肩書からイメージするようなものです。たとえば、偉そうな人だから、すこし下手にでておこうとか、人が良さそうなので、親しくなっておこう、となります。
なお、裏道処理による第一印象の制約が強すぎると、その人物に対する思い込みが発生して、表道の情報処理をゆがめることになります。たとえば、「こんなに魅力的な人が悪い人のはずがない」「ぱりっとしたスーツを着ているからあやしい人のはずはない」となってしまい、詐欺の餌食になることもあります。
●見た目の良さを作り出すもの
見た目の良さを作り出すものは、身体的特徴、動作、服装の3つです。それぞれ、何をもって見た目がよいかは、かなりのところまではっきりしています。
1つは、身体的特徴、とりわけ、顔です。いうまでもなく女性なら美人、男性ならイケメンです。化粧技術が日本では格段に進歩してきています。先日も、TV出演したとき、お化粧をしてもらいましたが、あまり素敵だったので家に帰って妻に見せてしまいました。
2つは、表情や仕草です。無表情はもってのほか、あなたと仲良くしたい、話したいとの気持ちを表情と仕草で示すことになります。とりわけ、子どもは表情や仕草を読み取る天才です。したがって、とりつくろった表情や仕草はだめです。ただちにその嘘を見抜かれてしまいます。
最後が服装です。TPOを心得ておけば、どんな服装でも見た目が良いことになります。流行にもちょっぴり気を配れれば言うことなしです。
なお、相手が中高生になると、教師の見た目は、自分の将来の見た目を設計する暗黙のモデル(師範)になっています。いささかもおろそかにしないほうがよいと思います。いつもジャージと運動靴では、モデル効果を発揮できないことになります。
●なぜ見た目のよさは人をひきつけるのか
4つほど理由があると思います。
1つは、見た目のよさは、芸術作品を見たときのように、理屈抜きで気持ちをポジティブにしてくれます。
2つは、学習効果です。TVドラマやCMに出てくる見た目のよいタレントの振舞いを朝昼晩と見せつけられれば、黙っていても見た目のよさの効果を学習してしまいます。
3つは、後光(ハロー)効果です。見た目のよさは、性格や能力などのほかの点もすばらしいとの判断も生じやすいので、一層、ひきつけられることになります。
4つは、自分のために見た目を気にしてくれたとのメッセージを与えることです。デートの相手がとんでもない格好であなた目の前に現れたら、どうでしょうか。
●見た目が悪い人の勝負所
第一は、第一印象で勝負しないことです。「人は見かけにあらず、中身が勝負」です。ただし、中身をわかってもらうには時間も手間隙もかかります。とりあえずは、第一印象もおろそかにしないに越したことはありません。しかし、第一印象が悪い人でも、それなりの工夫と努力で中身へ誘導できます。
幸いなことに、教師ー子ども関係は、長期間にわたって築かれますので、第一印象にはそれほど強くは依存しませんし、第一印象をさまざまな形で修正してもらえる機会があります。3つほど、おすすめのコツを紹介しておきます。
1つは、相手との接触回数を増やすことです。接触頻度が多いほど好感度が増すという単純接触効果が知られているからです。「去るもの日々に疎し」の逆です。
2つは、傾聴効果の活用です。相手の話をじっくりと聞く姿勢です。相手からの好感と信頼をうることができます。
さらに、自慢話しや押し付けにならない程度の秘密がかった自己情報の提供です。「内緒だけと、先生も昔、不登校だったのよ」といった類の話です。相手との情報の密やかな共有は信頼関係の基礎になります。