天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】探偵ミタライの事件簿 星籠の海【14作目】

2016年06月08日 | 映画感想
「探偵ミタライの事件簿 星籠の海」

ミステリ好きなら知らない人は絶対にいない!島田荘司氏の、これまたミステリ好きなら一度は手に取った事があるであろう
「御手洗潔シリーズ」を遂に映画化。
…と言うか、自分全然知らなかったんだけど映画に先んじてTVドラマ化もされてたのね。その際に御手洗潔役を演じたのが
本作でも同役を演じている玉木宏さん。TVドラマ版を演じた事で原作者の島田氏から絶賛されたそーで映画版も続投しているらしいです。

個人的に御手洗潔シリーズには特別な思い入れがあるんですよ。
私がミステリー物にハマるきっかけを作ったのが正に御手洗潔シリーズの第一作目「占星術殺人事件」だったんですわ。
今から20年以上前に読んだんだけど、本当に驚愕の展開で唖然としたのをよーく覚えてる。
それ以降いくつか御手洗シリーズは読んでいるんだけど…「魔神の遊戯」辺りまでかな?読んだのは。
という訳で本作の原作小説は未読状態で鑑賞。

あらすじは…
大学で教鞭を取る脳科学者・御手洗潔の所にある日女性編集者の小川みゆきがやって来た。小川曰く、御手洗の親友で推理小説作家・石岡に
「御手洗シリーズ」の新作を書いて貰う為に新たに御手洗に難事件を解決して欲しいというのだ。小川がいくつか持って来た事件ネタの中で
御手洗が目を留めたのは「死体島」という見出しの記事だった。この半年間に6体もの死体が流れ着いたという瀬戸内海にある興居島という島に早速2人は向かう事に…

先ず、なんで石岡が出てないんだ???
「御手洗+石岡」コンビで御手洗潔シリーズなんじゃねーの?ちなみに今回の御手洗とバディ組んでるのがこの女性編集者の小川みゆきっていう
キャバ嬢みたいなチャラ~いキャラの娘なんだけど、当然ですが原作小説には登場しないキャラです。
このノリ、島田センセイの小説におよそ登場するキャラじゃないよね。うん。なんだろー?御手洗と石岡では絵ヅラ的にむさくるしいから
石岡の代わりにキャピキャピ女子を盛ってみた、という事?ウソだろー。ウソだと言ってくれー(薄涙)
…もしかして、この「映画版・ミタライシリーズ」が今後も続編とか作る事になったら、その時も石岡は出さずにこの娘で通すの?えぇ~><

まー石岡は置いといて本作。
で、↑あらすじで書いた通り死体が短期間にじゃんじゃか漂着した瀬戸内海の小島にやって来るんだけど、御手洗センセイは海岸に立って景色を眺めただけで
死体漂着の謎を解いてしまう…流石っすね!(笑)
んーと、意地悪な書き方しましたが、そもそも本作は「御手洗潔という男は一体どういう人間なのか」が分かっていないとこの作品の世界観に
入れないんじゃないのか?と危惧するんですが。少なくとも映画本編を観ただけでは御手洗潔の横顔がもう1つ伝わらない気がするんですよね。

映画は冒頭いきなりエグ~い絵で始まってなかなか刺激的なんですが(この辺りのくだりはいかにも島田センセイ作品っぽい!)
その後一旦この事件から離れて「死体漂着の謎」や「東南アジア系女性変死事件」等が入り込んで来て「あの冒頭の事件はどーなったんだい!」
とヤキモキした所でようやく本題に辿り着く、という感じですか。あの目と口を塞がれた謎を解くくだりはちょっとゾクゾクしましたネ

ところでこの次々と巻き起こる事件と並行してこの地の歴史に絡むミステリー「星籠の謎」を追う事にもなります。
村上水軍とか忽那水軍、ペリー来航やら織田信長等々、福山~瀬戸内海の歴史にまつわる出来事を紐解きながら「星籠」の秘密を探る訳ですが
正直、本作の副題にもなっているものの、この歴史云々のくだりが事件とはほぼ絡みがないと言うか、この星籠の謎を追っていた大学の準教授が
東南アジア系の男達に襲われた事から御手洗が首を突っ込む事になるんですが…この展開はやや強引過ぎる気がしましたね。
そしてついでに言うと準教授の役を演じていた石田ひかりさんが…老けた、じゃなくてセリフすげー棒読みだったのが萎えたわ。
どうしても説明口調になっちゃうのはしょうがないんだけど(アレは御手洗に説明してるんじゃなくて観客に説明してる訳だしねw)
もう少し何というか…会話の中でさりげなく歴史背景を提示する、とかナントカ出来ないものなんでしょうかね?^^;

それにしても、光の速さで謎をガンガンに解き明かしていくのは御手洗潔の仕様なのでまあいいとして、それにしてもやっぱり石岡がバディじゃないのが
痛いと思うのは原作ファンだからなのかやっぱり…だってさ、「天才教授と助手役として若手のピチピチ女子」の組み合わせってまんま「探偵ガリレオ」と
丸被りじゃないですか。まあ思い返せばガリレオシリーズも元々原作は「ヤロー×ヤロー」の組み合わせだったのをTVドラマ版は絵ヅラ問題で
強引に「女性刑事」との絡みに改変して、あーでも東野圭吾センセイはその後小説の方にも後付けで女性刑事キャラ登場させてTV版の方に寄せたもんなぁ。
島田センセイは今後の作品で東野センセイのように映画版に寄せて女性編集者を登場させるんでしょうか…ちょっと気になるトコロですね。

基本、ミステリ小説を読み慣れてる人が本作を観ると、登場人物があらかた出揃った所で大体2人位に真犯人の絞り込みが出来ると思うんですねw
それで「どっちかなー?コッチの方が怪しい表情のショットが多いから逆に犯人ではなさそーな」みたいな「絵ヅラで更に絞り込み」つつ
話が展開していって後付け情報等が提示されて来たトコロで「ああ、ナルホド。動機がココでコイツの素性がコレだから真犯人はコイツね!」
位までは簡単に引っ張り出せると思うんですが、本作がなかなか良く出来てるなーと思ったのは(トリック的に)
(以下、事件の真相に関わる記述がありますので文字隠します。読みたい方は【 】部分をドラッグして下さい)

事件の全てが計画的だった訳ではなく「偶発的な事故」に乗っかる形で真犯人が事件へと膨らませて行った、という部分でしょうか。
 ぶっちゃけ、色んなネタが出揃った所で「あれ?どうして赤ん坊は誘拐されて殺されなくちゃならなかったんだ?」と思ってたら…そーゆー事か!と。
 ここの点は種明かしまで全く思い付かなかったわー。そっかーあの人の周辺環境も重要な伏線だったのねー!みたいなネw


本作は島田センセイの故郷である「広島県福山市」が舞台になっていて、福山市の至る場所が劇中に登場しますし、星籠に絡んでは福山の景勝地「鞆の浦」他
市内の美しい景観をふんだんに使っていて絵的にも充分魅力的な作りになっています。この夏の福山市の観光誘致に一役買ってくれるんじゃないでしょうかw
まーそんな訳で、本作は基本的に「御手洗潔シリーズ」のファンだったら問題なく楽しめるだろうと思いますが、ミステリを普段読み慣れてない方、
御手洗潔?誰それ?状態な方には少々取っつき難い部分があるんじゃなかろうかと思われ。何しろ迷うヒマなくグイグイ御手洗センセイが難事件を
謎解きして行っちゃいますので(笑)…観客は御手洗潔と同じ目線とスピードでこの事件のカラクリを推理する必要がありますからね!
コメント (2)
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