《雨上がりの夜空に》
新井田耕造のドラムとリンコ・ワッショー(小林和生)のベースがリズムをきざむ。そこへチャボ(仲井戸麗市)のノイズまじりのギターがからみ、ゴンタ2号のキーボードと、生活向上委員会(略して性行為)のメンバーだった梅津和時らのホーンセクションが加わる。
そこへギンギラのメイク、ツンツンのヘアでステージに登場した小男は叫ぶ。
「愛し合ってるかーい!」
《ボスしけてるぜ》
まさか忌野清志郎が死ぬなんて。しかもガンなんてつまらない病気で。彼らのライブで「ったくしょーがねー銀座のボスがこんな名曲を放送禁止にしやがってよ」とせせら笑っていたあの無敵の男が。いまRCサクセションのオーディエンスであることがこんなに幸せなのか、と思わせてくれたあの男が。
《スローバラード》
学生だったころ、わたしは吉見佑子という評論家を信用していなかったので、彼女がRCの「シングル・マン」を再発させようとしていたことには当時まったく賛同できないでいた。でも、聴いてしまったのだ所収「スローバラード」を。しかもよせばいいのに近年になって母親が入院しているときにクルマのMDに仕込んでいたため、今でも聴くたびに泣いてしまう。市営グランドの駐車場に、なにか忘れ物をしているのではないかと今でも思う。
《いい事ばかりはありゃしない》
彼らのアルバムのなかで、いちばん聴いたのは「PLEASE」だろうか(アルバム・ジャケットを開くと、タイトルには続きがあることがわかる)。「ダーリン・ミシン」「あきれて物も言えない」「トランジスタ・ラジオ」などの名曲ぞろい。
「月光仮面が来ないのと♪ってどういう意味かな」
「……………………あれが来ないってことよ」
当時のガールフレンドから指摘された。後日、同じようなシチュエーションに彼女と陥り、電話ボックスのなかでへたりこんだことを思い出す(結局、遅れていただけでした)。
《デイドリーム・ビリーバー》
アイドルが亡くなったとき、ファンが過剰な反応を示すことにわたしは苦々しい思いでいた。落ち着けよ、と。尾崎豊にしろ、実はジョン・レノンだって他人事だったのだ。でも、今日はしんどい。義父の法事をなんとか終え、なるべく考えないようにしていた清志郎の死が一気に胸になだれこんできた。どうか彼の歌声が、あの絶妙のソウルが天国で響き渡っていますようにと祈る。
PLEASE PLAY IT LOUD.