PART1はこちら。
麻薬パッチを貼って痛みをとろうとする中井の姿に、「とにかく(母親が)苦しまないようにお願いします」とやみくもに医師に懇願した自分を投影する。
こんなやりとりがある。
長男「病院に行きゃあ助かる方法があるかもしれないんだし、もっと痛まずに眠れることだって」
長女「兄ちゃん失礼よ!先生(緒形)の前で」
長男「失礼とか何とか言ってるときかよ!レントゲンも撮らない、CTも見ない」
長女「そんなことずっと前にさんざんやったわよ。病院にはとっくに見放されたのよ」
長男「けど」
長女「今ごろ帰ってきてえらそうに言わないでよ!」
倉本聰(この場合、緒形拳が代弁している)が考える理想の死に方には異論もあるだろう。わたしもストンと落ちないところがある。
実は欠点もたくさんあるドラマだったのだ。平原綾香があくまでお嬢様演技に終始したのは仕方がないにしても、実はキーポイントである養蜂業者の息子が“あいつ”だったのは理解に苦しむ。ひどい演技とか以前の問題なのだ。その昔、倉本の「大都会」(日本テレビ)のPARTⅠが、「あいつさえ出ていなければ」と言われていたことを思い出す。渡哲也演ずる黒岩の妹(仁科明子)の恋人を演じたそのときの“あいつ”とは神田正輝のことです。確かにありゃーひどかったけど、今回はそれ以上に……。
でも、すったもんだの末、幸福に死んでいける中井の姿には納得できた。死に方は容易に選べない。でも、その瞬間に家族にいてほしいという願いは共通しているだろう。このドラマは、しかし中井が最も気にかけていた息子、そして将来訪れるであろう緒形の死には妻の不在が設定されている。それぞれの贖罪ということなのだろうか。
だからこそ、中井はむしろ納得ずくで死に行くことができたはず。すばらしいドラマだった。あらゆる欠点を緒形拳の姿が帳消しにもしてくれたし。それでも見逃してしまう自分がなさけないですが。