「春期限定いちごタルト事件」
「夏期限定トロピカルパフェ事件」
につづく“小市民”シリーズと
「氷菓」
「愚者のエンドロール」
「クドリャフカの順番~十文字事件」
につづく“古典部”シリーズのそれぞれ最新刊。
小市民たらんとする小鳩くんと、ひたすら無精であるがゆえに明晰さを隠し通そうとする古典部の折木奉太郎。ありえない高校生(笑)である彼らは、「犬はどこだ」や「さよなら妖精」「インシテミル」の《やる気のない名探偵》の系譜に属する。米澤の著作のほとんどがこのパターンだから、彼の分身といってもいいのだろう。
折木の信条はこうだ。
やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことなら手短に。
まことにけっこうな話だが、状況がそれを許すはずもなく、小鳩くんも折木も事件にまきこまれていく。小市民シリーズの方がちょっとダークで、普通の高校生のように普通の恋愛を“しているように見えさえすればよく”、そのために二股をかけていたガールフレンドを、逆に恐慌におとしいれたりする。そのくせ永遠のライバルであり、同時に離れられない運命の女、小佐内さんとのスイーツ争奪戦には例によって裏の裏まで読みながら血道をあげる。笑えます。
小市民シリーズは次回で四季が一巡し、小鳩くんたちは高校を卒業する。古典部のラストでは、折木が永遠のマドンナ、千反田さんに思わずある提案をしそうになってしまう。どちらも新展開がみこめそうだ。
およそありえない高校生たちの日常でありながら、自分のことだけはコントロールできないでいる彼らは、やはり十代の混沌のなかにいる。愛すべき少年たち。どちらもおすすめのシリーズです。ぜひ。