人称がはげしく転変するので一見とっつきにくい。はたして「わたし」が行っていることは何なのか。現場に「いない人物」の目的とは?一人称でなければ、あるいは三人称でなければ語れないことがあとでわかる。壮大なひっかけ。みごとな叙述トリック。
事件の背景となっているのは(近ごろ多すぎるような気もするが)不道徳きわまりない事件。その事件にふりまわされる謝罪を代行するというコロンブスの卵のような商売で当てた若者たち。
彼らが窮地に立たされるのは、SORRYというだいじな言葉を“請け負う”ことへの道徳的指弾の意味もあるのだろうか。宗教的背景は、キリスト者ではないのでいまひとつ。
確かに、SORRYは
「なかなか口にできない」Hard to say I'm sorry
とシカゴも歌っていたし
「いちばんむずかしいよ」Sorry seems to be the hardest word
とエルトン・ジョンも歌っていたからなあ。
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謝罪代行社(ハヤカワ・ミステリ1850) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2011-08-25 |