「日本のいちばん長い日」「関ヶ原」「検察側の罪人」と、近年は大作請負人のようになっている原田眞人が、95年にビデオ作品として撮影した作品の劇場公開版。噂に違わず、すごい映画でした。
チンピラの達男(高橋和也)は、右翼政治家の土門(内藤武敏)に女を世話する。その嗜虐的性向から、あてがった女タマ(片岡礼子)を傷つけられた達男は、土門の金を奪う計画を立てて成功はする。しかし所属する組から追いこまれ、仲間たちが一気に始末されてしまう。ひとり逃走する達男の前に、ペルーから来た日系人タクシードライバー、寒竹(役所広司)が現れる……。
ビデオのタイトルが「復讐の天使」だったことからもわかるように、達男と寒竹(かんだけ……すばらしいネーミングだっ)がやくざと土門に復讐する過程がメイン。その骨格はもちろん泣ける。殴り込みは高倉健と池部良を彷彿とさせるし。
しかしこの作品がそれにとどまらず、劇場公開、インターナショナルバージョンの発売にまで至ったのは、命を捨ててもかまわないとまで思い詰める寒竹の動機付けがあったからだろう。日本人にはおよそ想像もつかない悔恨が彼にはあり、だからこそ最後に彼は死地に向かうのだ。悪役としての政治家が国粋的で、移民を侮蔑している設定もそれを補完している。
原田眞人の演出はまことに快調。ベタなシーンを徹底的に省略するスマートさがいい。快作「バウンスko GALS」を2年後に撮る下地は着々と準備されていたわけだ。
そしてそして、なによりも役所広司!たどたどしい日本語で語る過去が、浮ついた日本人を撃つ芝居が泣かせます。そして、彼の最大の取り柄がユーモアであることを再確認。この作品の翌年に彼が主演したのがあの「Shall We ダンス?」だったのはその象徴だ。殴り込みの際に、土門の家で働いている移民への寒竹の語りかけなど、うなるほどうまい。
激しい暴力描写、ヘアヌード(片岡礼子はいつも景気よく脱いでくれますねえ)ありなのでR指定は必然。心の準備をしてからご覧ください。傑作です。
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