第7話「殺人リハーサル」(すごいタイトル)はこちら。
外科医中川淳一(鹿賀丈史)は、浮気の事実を興信所につかまれ、窮地に陥っていた。特急のビュッフェで興信所の職員(河原さぶ)に引導を渡された中川は、医者らしい方法で殺人を遂行する。その特急に偶然居あわせた古畑は、中川が外科医であることをいきなり見抜き……
名探偵、がいれば名犯人もいる。今回の中川淳一はまさにそれ。特急列車という密室の中で、古畑によって次第に追いつめられていく過程をむしろ楽しんでいるかのよう。
というのも、中川というキャラは三谷幸喜がTV界で名をあげた「振り返れば奴がいる」(1993 フジ)の“軽薄でありながら心に邪悪な芽を潜ませる伝説の外科医”をそのまま流用したのである。つまりスピンオフ。こんな例は日本のショービジネスではめずらしい。
悪を自認する織田裕二と、良心的な石黒賢というふたりの医師の立ち位置が、次第に逆転していく見事なドラマ。「白い巨塔」の財前と里見の対立をひっくり返して見せたわけ。鹿賀丈史は、若き二人の医師の激突を高みから楽しみながら、しかし同時に翻弄されていく上司をやはり巧みに演じて見せていた。
そんな嫌みな男が古畑と対決するのだ。面白くないわけがない。ちなみに、前にも紹介しましたが三谷幸喜の脚本が遅れに遅れたため、織田は以降、彼の作品にはいっさいかかわっていない。オトナになれよ織田。
役者陣がまたいい。興信所職員の河原さぶ、車掌役の梶原善、ヤクザな乗客の大河内浩など、密室劇なだけに彼らの濃い芝居が引き立つ。
「ビュッフェA」「8号車」など、場面ごとに字幕が入るなど、昔の推理劇の雰囲気もばっちりだ。
初対面でありながら、なぜ古畑は中川が外科医であることを見抜いたかの推理が、第5話「汚れた王将」での“新幹線で酢豚弁当を食べるのが夢”に関わっているあたりもうまい。おすすめの回ですこれ。
第9話「殺人公開放送」につづく。
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