日経ビジネスオンラインで連載されている小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」(例によってダジャレですよ。A piece of cake=朝飯前)の書籍化。
その切れ味で、朝飯前な文体に見えながら(「コラム道」で小田嶋が指摘したように、何を語るかよりもどう語るかにものすごく気をはらっているのがわかる)、どうしていまの日本がどうにも息苦しいのかをみごとに示してくれている。
この書で小田嶋が仮想敵に設定したのは、「群衆」だ。ただの人の群れではない。インターネットによって恣意的につながった、それぞれは孤独な群衆。小田嶋はこう喝破する。
「インターネットを通じて大勢の人間がひとつの現象を見ている時、そこには、『群衆』という架空の人格が誕生する。誰かが性悪だとか、主導しているとかいう話ではない。ある程度以上の人数がひとつの場所に集うと、その人間たちは、集まっている一人ひとりの人格が、温厚で礼儀正しいのだとしても、全体としてふるまう時には、ひとまわり残酷な集団になる。そういうものなのだ。」
この前提は強い。
この考え方を習得しておけば、ネトウヨたちのわけしりな口撃もある程度おだやかに受け流すことができるかも。
そのうえ、下劣な政治家やその支持者がなぜ減らないのかも理解できる。彼らは本音こそが、自分たちの考える“現実”こそがすべてで、それを論難する輩は「お花畑の住人」と斬り捨てるだけ。野次は口汚ければ口汚いほど賞賛されると。なるほどねー。
改憲勢力にも小田嶋の皮肉(に見せかけた意見)は炸裂する。自衛隊が現実的には軍であることを認めながら、だからって現実の方に憲法を近づけることが正しいのか。これを、深夜の環八の走行速度を例にひいて解説するあたり、さすが一流のコラムニストだと感服。
わたしとて、彼の警句によって、お花畑の群衆のひとりになっていないかと不安にさせられましてよ。
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