ロマンポルノでかろうじて生きのびていた70年代の日活は、なんと当時共産党系労働組合が主導して経営していた。不健康不健全なポルノを日本共産党はもちろん批判していたのだが、会社がつぶれるよりは、と「心ならずも」ポルノを作り続けていたわけ。
しかしビデオの普及でいよいよ苦しくなり、一般映画路線にイチかバチかで再びうって出ることになった。いわゆる“ロッポニカ”である。これがもう、予想どおり苦戦の連続。結局はわずかな期間の延命措置にすぎなかった。でも、ロマンポルノ人脈があったおかげで作品的には面白いものが多かったのも確か。その最終作にして最高作が「リボルバー」。藤田敏八監督、沢田研二・柄本明主演で描く、一挺の拳銃をめぐる群像劇。脚本は例の荒井晴彦だ。ビデオで観たわたしはこんなメモを残している。
「こんなに、生活が身軽でありうるなんて。畏れのない生活が永遠に続くかと錯覚させる大傑作。びっくり。」
この「リボルバー」の原作者が佐藤正午。‘83年に「永遠の1/2」(この映画化作品も傑作)でメジャーデビュー。佐世保に住み続け、競輪ばっかりやっている独身偏屈作家だ。この人の作品には、エッセイも含めて妙なおかしみがあり、そして何より無責任だ(あるいはそう思わせることで身軽になろうとしている)。そんな作風を、そのまま活かしたのが映画「リボルバー」だったわけ。
万人におすすめできる作家ではないけれど、熱狂的なファンはいて、おかげで彼の現在の活動場所は、似つかわしくないにも程がある岩波書店である。編集者に正午フリークがいるのだろう。そして岩波といえば新書。近作「小説の読み書き」は、権威あるその岩波新書で古典を佐藤らしいひねくれ方で読み解いていて爆笑。(はっきりと名指しはしていないが)“朝日岩波文化人”の筆頭である大江健三郎にケンカを売っていたり、「声に出して読む」ことなど不自然だ、と斎藤孝を(これまた名指しはしていないが)批判したり。納得の一冊。あー面白かった。
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