事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「まほり」 高田大介著 角川書店

2020-01-03 | ミステリ

時間だけはたっぷりある正月。歯ごたえのありそうな本にもチャレンジしてみよう。ということで「まほり」。民俗学ミステリだとか。さほど期待せずに読み始め……うわあああ面白い。やめられないの。高田大介って作家を今まで知らなかったのは損してたなあ。

物語はふたつのパートからなる。妹の転地療養のために群馬の田舎に越してきた中学生が、ある少女と出会い、その行方を追う展開。そしてもうひとつは、社会学を専攻する堅物の大学生がある事象を追うために故郷(やはり群馬)に帰り、幼なじみの司書の協力を得ながら謎に迫っていくストーリー。ふたつが重なる地点に、邪悪で、陰惨な歴史が浮かび上がる……

この、歴史を調べていく過程がむやみに難しくて、同時にわくわくさせてくれます。

司書の紹介してくれた二名の歴史学者が、書かれなかったものを類推してこそ歴史だとする側と、そこにあるものをすべて受け入れることが学問だとする側に分かれ、しかしお互いを信頼し合っているあたり、学究の徒とはなかなか剣呑で味わい深い。ラスト近くに登場する変な言語学者というのは、きっと作者本人がモデル(笑)。

神社という存在が仏教とねじれながらどのような変遷をたどったか、江戸期の飢饉によってどのような悲惨なことが行われたか、そしてそれは戦後まで続いていることが次第に明らかになり、主人公がなぜある事象にこだわったかにつながる。学問とはミステリにほかならないことが知れる。なるほど民俗学ミステリ、ありだ。

こむずかしいだけでなく、ラブコメぶりも絶好調。幼なじみの群馬弁がいいし(彼女がつくるおむすびは本当においしそうだ)、ふたりの関係がどこまですすんだかを遠回しに描くサービスぶりもいい感じ。

彼らが行き着いた結論に読者も追いついた途端「まほり」というタイトルのおぞましさに気づかされるなど、小説としてむやみに面白いです。うちの図書館にも彼の前作「図書館の魔女」全部購入を勝手に決定!


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