PART3はこちら。
父親の虐待と母の夭逝など、身の不幸を嘆いてばかりいる気弱な主人公、寺田辰弥になんと萩原健一(東宝版は高橋和也)。これは意表をついたなあ。
ここでおさらいしておくと、原作と東宝版は終戦直後のできごとに設定されている→そのために大量殺人事件の時期も前倒しされている。
ところが松竹版は、舞台をいきなり現代にもってきた。そのためのショーケンの起用だろうし、職業を航空機の誘導員という、画的にど派手なものにしたのだろう。後半の鍾乳洞の暗さと、空港のまばゆさの対比は確かに効いている。
事件の発端は、新聞の尋ね人欄(現代、といっても昭和ですから)に辰弥が載ったこと。いぶかしむ辰弥は、上司のすすめもあって大阪の弁護士事務所を訪ねる。待っていたのは弁護士の諏訪(大滝秀治)と老人(加藤嘉)。身元について質問を重ねた諏訪は最後に
「裸になっていただけますか?」
と、とんでもないことを。気弱な辰弥(ショーケンだからとてもそうは見えないのだが)は渋々応じる。彼の身体には虐待された傷が大量に残っていたのだ。それまで無言をとおしていた老人がうめく。ここ、配役もあってほとんど「砂の器」そのまんまです(笑)。
彼は辰弥の母親の父、つまり祖父にあたる井川丑松だった。
「た、辰弥……」
ようやく孫を見つけた丑松は、しかし次の瞬間、血を吐いて昏倒する。
最初の殺人。
犯人が用いた方法は、丑松が常用している薬のなかに、毒がはいっているものを混入させるというものだった。つまり、どの時点で彼が死んでもかまわない殺人なのだが、辰弥と再会した場面だったことで、後の八つ墓村における辰弥の行動が制限される結果となる。
村人は丑松を辰弥が殺したに違いないと思いこんだのだ。以下次号。
忘れてました。
八つ墓村を初めて訪れるショーケンと小川真由美の
シーンが、あまりに陽光にあふれているのは、
迫り来る災厄をむしろ予見させてすばらしかったですね確かに。