藤沢周平作品を読むのは久しぶり。函入りの単行本が遊佐の図書館にあったので借りる。初期の数作と絶筆のこの作品以外はすべて読んでいるので、コンプリートは近い。
あの上杉鷹山の伝記。財政難にあえぐ米沢藩を立て直したことで知られた人物なので、次第次第に富んでいくサクセスストーリーだろうと思っていたら全然違った。
なにしろこの作品では、再建前に鷹山は隠居してしまうのである。もちろん隠居というのも一種の政治的行動ではあり、彼は有能な部下を抜擢し、その人物をバックアップすることに傾注して……と読者に予想させた時点で物語は終わる。
文藝春秋に執筆当時、藤沢周平はすでに病に侵されていたことも影響したかもしれない。しかし人物としての上杉鷹山を知るうえで、格好の書であることは確かだ。
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