わたしはビジネス書を読む習慣がない。というかはっきり言うと蛇蝎のように嫌っています(笑)。功成り名遂げた元経営者(往々にして現役の経営者だったりもする)の自慢話や、株が上がるだの下がるだのという与太話(ほら話でもある)を読んで、自分の生活が豊かになるとはとても思えないんだよなあ。
それに、やけに小難しい人生訓を四文字熟語で語ったりするし、後進を叱咤する意味合いもあるだろうけれど「ルール」の押しつけがどうにもうるさくて。
そんなわたしがどうしてこの書を手にとったかというと、小倉氏が官僚相手にさんざんけんかを売っていた経緯をおぼえていたから。消費者の利便を求めるクロネコヤマトの宅急便を、官僚が邪魔しているという構図の報道が多かったじゃないですか。ひょっとして規制緩和を求めるその心根が、新自由主義経済信奉者のそれだとしんどい……そんなことはなかったのでちょっとホッ。彼は小泉郵政改革なるものにも反旗を翻していたのだ。
単なる偉人伝になっていないあたりもいい。彼が大和運輸の二代目として(初代もなかなか魅力的)倒産寸前まで会社を傾けてしまい、最後に打った大バクチが宅急便。
実は小倉氏はYPS(ヤマト・パーセル・サービス)という名前にしたかったらしいけれど、宅急便で大正解よね。彼が官僚に反抗するときに、まずはメディアにコメントするあたりの手管もうまい。佐川急便への対抗意識が確実にあったとか、社内の大株主を駆逐するための権謀術数とか、ビジネス書も面白いっすね。生臭くて。
妻を病で失った彼は、障がい者福祉にのめりこむ。ビジネスマンとして、障がい者の自立を手助けしようというあたりは泣かせます。
この春、ヤマト運輸は信書が郵便でしか送れない現状に異議を唱えるためにクロネコメール便を廃止した。小倉イズムは確実にこの会社に根付いているんだなあ。ちょっとわたしは仕事の方ではそれで困ったりもしたんだけど、そういう経緯なら仕方ないっす。
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