04 「壊死る」はこちら。
密室殺人である。本格である。ミステリファンとしては気合いが入るのである。
ミステリにおいて密室が特別な意味を持つのは、推理作家にとって、一種の宿題のようなものだから。共通の課題でどれだけ自分の色が出せるか、創作意欲をかきたてられるのだろう。ただし、密室殺人はとても微妙な問題をはらんでいる。それは
「なぜ殺人が密室で行われなければならないか」
の理由づけがむずかしいのだ。そりゃそうでしょう?現代の警察が、完全な密室であることで特定の容疑者を除外するとはとても思えない。
今回のケースはしかしちょっと変わっている。
・舞台は古いホテル(オートロックではないことが重要)
・窓ははめ込み
・被害者がいた部屋の前で電気工事が行われており、被害者以外に出入りがなかったと複数の人間が証言している
・向かいのビルから、事件が起こったと思われる時間に“火の玉”が見えた
・容疑者である被害者の妻(水野美紀)は、その時刻に移動に3時間はかかる場所で買い物をしていた
……さあ湯川はこの謎をどう解くか。絞殺された被害者の首に擦過傷があったこと、火の玉の存在、そして被害者がアーチェリーをやっていたことからある仮説をたてる。この密室“殺人”において、“犯人”は必ずしも密室を意図していたわけではないことがわかる。
犯人の動機はおよそ納得できないものだが、ひとりの登場人物によってこのドラマは違った展開を見せる。ぜんそくのために転地療養している被害者の娘はこう語る。
「お前のため、お前のため、って言われて育った子どもは、あたしみたいにひねくれる」
湯川はこう返す
「貧乏な家庭に育ったからといってひねくれて育つとはかぎらない。ぼくがいい例だ」
反証とはとても思えないあんたが言うか(笑)。しかしひねくれものたちの連帯にグッとくる。家族とは、結婚とはなにかを問う回。ささえたのは、娘役を演じた大後寿々花でした。さーすがセクシーボイス!
06「夢想る」につづく。
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