温厚そうな町のパン屋。客あしらいもていねいだ。特にまじめな若者(男女問わず)を彼は応援している……ように見える。しかしその男、榛村(はいむら)は、24件の殺人容疑で逮捕され、死刑判決をうけていた。彼は次々にそのまじめそうな若者たちに、爪をはがすなどの拷問を加え、屠り、死体を焼き、遺灰を庭にまいてそこに植樹までしていたのだった。
榛村は、むかし店に来ていた法学部の学生、雅也に
「ぼくは24人殺したことになっている。でも、最後のひとりはぼくがやったんじゃない。真犯人を捜してほしい」
と依頼する。紳士的な口調。だれにでも好かれ、とても殺人犯に見えないパン屋は、どうせ死刑になるのに、なぜ一件だけにこだわるのか。
「だって自分がやったことじゃないので裁かれるのって、いやじゃないか」
どのクチが言っているものだか。
雅也は次第に事件にのめりこんでいく。確かに、その一件だけは他の殺人と違う特徴があった。
この映画がすごいのは、真犯人を見つけてそれでおしまい、といった単純な結末にしなかったことだ。榛村の狂気の伝染力こそが……あわわわ、言えません。
監督は「凶悪」「孤狼の血」「孤狼の血LEVEL2」「止められるか、俺たちを」などの白石和彌。
そして主演の榛村に阿部サダヲ。穏やかな物腰と残虐な行為の落差がすばらしい。出演は他に中山美穂、岡田健史(去年、本名の水上恒史にもどしている)、岩田剛典。10億を超える大ヒットを記録した作品でもある。すごい映画です。殺すにも程があるけど。
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