2026年、京都で暴動が起きる。京都暴動……人種国籍を超えて目の前の他人を襲う悪夢。原因はウイルス、化学物質、テロでもなく、一頭のチンパンジーだった。未知の災厄に立ち向かう霊長類研究者・鈴木望が見た真実とは…。吉川英治文学新人賞・大藪春彦賞、ダブル受賞の超弩級エンタメ小説!
(「BOOK」データベースより)
「テスカトリポカ」「爆発物処理班の遭遇したスピン」の佐藤究の作品なのだから、面白くないわけがない。が、これほどとは思わなかった。朝の3時ごろに目が覚めてしまい、就寝儀式として枕もとの本を手にとる……おわわわ、今日は米沢との往復なのだから寝不足はまずい、と思いながらもやめられない。コロナやスーダン情勢を予言したかのようなストーリーでもある。
途中まで読んだところでタイムアップ。つづきは米沢で……しまった。持ってくのを忘れてしまった。自動車道をぶっ飛ばして帰ったのはこの本のおかげでもあります。
鏡(アンク)という名を持つチンパンジーが引き起こす大虐殺。佐藤の暴力描写はあいかわらず達者だが、それ以上に人類と類人猿の違いがどこにあるのか、という考察にうなる。「爆発物処理班~」で量子力学のお勉強をさせてもらったのと同様、わたしの知らないことがたくさん仕込んでありました。
水面に映った自分のことを、これは自分なのだと猿は認識できるか。鏡に映る自分の左右が逆になっていることが、ある少年に影響を及ぼすあたりもうまい。
京都が舞台なので、金閣寺や太秦映画村で殺戮を行わせる設定には笑わせてもらった。「猿の惑星」「2001年宇宙の旅」などへの言及もうれしい。
そしてわたしはこうも思った。類人猿の進化が止まらない以上、人類もまた、進化の途上にあるのではないかと。
必読です。気の弱い人には例によってちょっと向かないけれども。
この本を読んだからではないけれど、猿って、なんかもの悲しくないですか。
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