1号車よりつづく。
組合員へのこの1冊
「陰の季節」 横山秀夫著 文藝春秋社刊
おそらくは忘年会のピークだったであろう12月20日の夜、わたしも学校の忘年会の二次会帰りに代行を呼び、車に向かった。いつもの行動。しかしいつもと違ったのは後ろにパトカーが忍び寄り、停車を命じられたことだった。運転代行業である以上、車まで客を乗せて行くのは白タク行為だと警告されたのだ。おかげで代行の運転手とともに自分の車まで歩いていくハメになったのだが、運転手の怒りはおさまらなかった。「自分たちだって飲んだときはウチの代行使うじゃないか……」
どんな職業の人間だって自分の業界が“変わっている”と思っている。わたしだって学校の特殊性ならいくらでも並べ立てることができる。だが、その特異性において警察にはとてもおよばないのではないか。新作「半落ち」で今年のベストミステリの座を取りまくった横山のこの短編集を読むと、そのことを思い知らされる。キャリアとノンキャリアの暗闘、ポストをめぐる争奪戦、虐げられる婦警の実態、県会議員との駆け引き……これが同じ公務員の世界かと思うぐらいだ。警務課、という一般市民には縁遠い世界が中心に描かれていることもあるのだが、こんなものを読んでしまうと、正義感あふれる熱血刑事が活躍する活劇に、もう興奮することもなくなるんだろうな、と少しさみしい。あの夜、客を乗せる代行車を「張る」あいだ、パトカーのなかで警察官たちの間でどんな会話がかわされていたかを察することができる、という意味では最高のテキストなのだが。それにしても、人事の交渉が続く生ぐさい時期に、こんなの読むんじゃなかったかなあ。
2002年12月24日付情宣さかた裏版Vol.39
……この出来事は、02年の暮れにF代行に乗ったときのこと。前回も特集したように、この会社は現在タクシー業にも乗りだしているため、こんなことはもう起こらないはず。他の会社ならあり得るんだろう?と突っ込まれそうだが、当時、数多くの摘発が行われたのはタクシー業界の要請をバックにしたと思われる一種の見せしめの意味もあったろうし、よほどひどい事例でもないかぎり、しばらくは平穏にすぎるのではないだろうか。
しかし代行の目的が「飲酒運転の防止」である以上、取り締まりがひんぱんに行われなければ、代行利用者は次第に減っていくはず。代行と警察は持ちつ持たれつの関係にあるのでは?なんて皮肉な考え方もできる。
以下次号。
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