直木賞候補作のなかで、落選はしたけれども(まあ、あんなのといっしょですから)面白そうな雰囲気がびんびん感じられた短篇集。互いの作品が微妙に連関している。
まったく知らなかった作家だけど、これまでボーイズラブ系の作品をたいそう出しているのでした。意外なほどにテクニシャン。ちょっとこれは……とドン引きするようなビターなのもあるけれど「魔王の帰還」という作品がとにかく素晴らしいの。
身長188センチを誇る姉(彼女だけは子どものころに住んでいた岡山弁がぬけないという設定が効いている)が夫と別居して実家に帰ってきて……なお話。
屈託をかかえた弟、そしてガールフレンドは姉に圧倒されてゆく。こんな展開からまさかの泣かせるラストまで一気呵成。この一篇だけでも読んでほしいなあ。
私も「魔王の帰還」が一番好きでした。
あの乱暴な岡山弁には泣けましたね。
手練れの作品だと思いました。