その84「64(ロクヨン)前編」の特集はこちら。
原作の特集はこちら。
初日の1回目で見る。前編のボルテージがそのまま維持できれば、確かに“映画史に残”ったかもしれない。佐藤浩市の、記者たち相手の大芝居や、ポツンと立つ公衆電話が、ある人物の孤独を象徴したりもしていたので。
見終わって、うーんそうきたかと思う。前編で広げた大風呂敷を、妙にお行儀よく小さく折りたたんだなあという印象。ミステリが原作なので紹介がむずかしいのだけれど、64のストーリーの核は
・被害者が加害者になる
・加害者が被害者となり、なおかつ邪悪な瞬間を垣間見せる
これでしょう。誘拐犯を見つけ出すためにある人物がとった行動で読者はみな度肝を抜かれ、この驚きで感動した。ピエール瀧が主演したNHKのドラマも、瀧の地味ぃが演技もあって泣かせてくれたものだった。
でもこの後編はちょっと意外な展開を。まず、ミステリのキモとなる部分を、最初っから明かしてしまうのである。おいおいこれからどうするんだろうと思ったら、主人公が広報官らしくない行動をとる改変が行われている。
確かに、あの行動によって感動は生み出せたかもしれない。しかし三上(佐藤)自らがセリフで説明したように、自分の娘だけでなく、同じように別の人物たちも傷つける結果となってしまったのはなんともしんどい。そのあたり、計算が狂ったのではないでしょうか。
ラストの、公衆電話からの電話で救われた思いをするにしても、わたしは最後まで三上には広報官としての矜持を守ってほしかったと思う。
地方マスコミと中央の大新聞が根っこのところで反目し合っているとか、いやみな警務部長(滝藤賢一)の落胆が気持ちいいとか(笑)、確かに見せはする。
ただ、横山秀夫原作ものではおなじみの二渡(仲村トオル)の行動は不確実にすぎるとか、なぜ嫌味であると同時に魅力的だった県警本部長(椎名桔平)が登場しなかったのかとか、やはり不満は残る。
別に烏丸せつこの登場シーンが少なかったから怒っているわけではございませんよ。ええ、わたしはそんな小さい人物ではございませんよ!(笑)
それにしても、三浦友和はどこまで演技者としてすばらしいんでしょうかね。受けの芝居なのに、同時に攻撃的な刑事であることを納得させるあたり、渋い。
その86 法医昆虫学捜査官シリーズにつづく。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます