事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

勝手に人生相談Vol.60 本当の孤独

2022-05-17 | 日記・エッセイ・コラム

海岸通 風

Vol.59「一生懸命な人」はこちら

30年以上一緒に生活した妻が家を出ていきました。結婚後1年で実家に戻っていた娘と孫も一緒に、です。幼いころからかんしゃく持ちの自分に「もうこれ以上我慢できない」と言われました。この年になっての1人暮らしは寂しくてたまりません。何度謝っても「信用できない」の繰り返しです。関係を修復する手だてについてご指南いただければ幸いです。(60代・男性)

……これについては離婚をくり返した高橋源一郎が絶妙の回答を。

やるべきことは一つだけ、ひとりで生きる術(すべ)を身につけることです。あるときわたしも頑張ってやってみました。たいへんですけど。すべての夫はやるべきです。あなたは、どのくらい家事ができますか? 朝起きる、歯を磨く、顔を洗う。それはできますね。朝食を作りましょう。きちんと栄養を考えて。それから、昼食、夕食のメニューも考える。買い物にも行かなきゃならない。掃除をして、洗濯もする。ごみを出すのはいつでしょう。その他いろいろ。生活は些事(さじ)の集まりです。でも、どの一つが欠けてもうまくいかない。

たいていの家では、妻がみんなやっていて、夫は、ただ待っているだけ。だから、ぜんぶやってください。ただ生きてゆくことがどんなにたいへんなのかわかります。そして、家族と暮らすことの意味も。なにもかもひとりでできるようになったら(すべては無理でも)、ほんとうの孤独もわかるでしょう。そのとき初めて、妻や娘に謝罪することができるのです。あなたにはまだ謝る権利もありませんよ。(作家)

結婚後1年で実家に帰ってきた娘に、あなたがどんな態度をとったかは容易に想像できる。30年以上連れ添った(という認識ではないんでしょうが)奥さんが出ていったことにあなたは“理不尽だ”と思っているんですよね?かんしゃく持ちなのは幼い頃からだから仕方がないと思っているのではないか。

しかしこの人生相談には得がたい点があって、それは本当に自分が何をすればいいのかさっぱりわかっていないということです。もちろん自己防御にすぎない話は多いんですけど(人生相談に投書した時点で、たいがいの人は正解にたどりついている)、この人は本当に途方にくれている。逆に言えば、どれだけ罪深いのかって話です。

あなたにはまだ謝る権利もない。高橋源一郎の至言だと思います。え、わたしがじゃあどれだけ家事をやっている?えーと……

Vol.61「家庭菜園」につづく

本日の1曲は風の「海岸通」。妹のままでいた方がよかったかもしれない……連れてけよ彼女を。船に乗せろよ。確かに、電車での別れは警告音が鳴る(君の唇がさようならと動く危険性はある)。飛行機の場合はやたらにめんどくさい。でも船はテープが切れるだけなのかあ。


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