事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「脱北航路」月村良衛著 幻冬舎

2022-05-18 | 本と雑誌

北朝鮮の陸海空軍による大規模軍事演習。国の威信をかけたこの行事で、桂東月(ケ・ドンウォル)大佐は潜水艦による日本への亡命を決行した。しかも、拉致被害者の女性を連れて--。だが、そんな彼らを朝鮮人民軍が逃すはずがない。特殊部隊、爆撃機、魚雷艇、対潜ヘリ、コルベット艦、そして……。息つく間もなく送り込まれる殲滅隊の攻撃をくぐり抜け、東月達は日本に辿り着けるか? 極限状況ゆえに生まれる感涙の人間ドラマ。超弩級エンターテインメント!(Amazonより)

もしも北朝鮮の軍人が、横田めぐみさんを再び拉致し、潜水艦に連れ込んで日本に亡命を図ったら……かつて北朝鮮に拉致されたのと逆コースをたどる逃避行。徹底的に現実のシミュレーションを重ねた作品だろう。

機龍警察」の月村だからこそ描ける白熱の潜水艦チェイス。そこに日本の海上保安庁がどうからむか(あるいはからまないか)など、政治状況もからめてうまい。なぜ拉致被害者を連れていくかといえば、そうすることで日本が自分たちを受け入れるであろうという読み。

主人公を北朝鮮人にしたので、あの国の現状を微細に描くことができる。誰も本気で金正恩を尊敬などしておらず、ひたすら体制に絶望している。拉致を行った人間たちがどうなったかも興味深い。また、北朝鮮側から言えば、自国は「共和国」であり、韓国は「南鮮」、日本海は「朝鮮東海」になる。お勉強になります。

潜水艦はきわめて映画的な素材で「U・ボート」「眼下の敵」「深く静かに潜航せよ」「クリムゾン・タイド」そしてわが「ローレライ」など、枚挙にいとまがない。政治的に微妙な題材ではあるけれど(北朝鮮に遠慮するのではなく、北朝鮮憎しを助長するかもしれないので)映画化を考える商売人はいないだろうか。

っていうかなぜ機龍警察は映画化されないのだろう。CGアニメにあれほど最適な作品はないはずだが。実写だともっとうれしい。


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