第34話「哀しき完全犯罪」はこちら。
福山雅治登場。完璧な美男である彼に三谷が用意した役は、電動車椅子をあやつる殺人者。しかも友人に恋人を奪われ(実は違うのだが)、ふたりにある方法で復讐するという情けない男だ。もちろんこんな役を与えたのは、福山の美男ぶりに対しての信頼があったからこそ。
身体障害者を犯人にするのは、実はかなりリスキー。人権団体などからの抗議が容易に予想できるし、逮捕したとしてもカタルシスにもっていけるか微妙だから。探偵には障害者は数多くいるけれど、犯罪者の方はめったにお目にかかれないのがその証拠。
探偵のサンプルは簡単に挙げられる。
・ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムはほぼ全身を動かすことができない。
・おなじみ鬼警部アイアンサイドは車椅子。
・「Yの悲劇」などのドルリー・レーンは聾唖者だし、
・シャーロック・ホームズはコカイン中毒でマット・スカダーはアル中(笑)
……ね?他にもいっぱいいます。ミステリにおいて探偵は犯人を追いつめる一種の強者だから、ハンディキャップはむしろお似合いなのかもしれない。逆もまた真なり。弱者である犯人を障害者に設定するのは、だからドラマとしてしんどいのだろう。
さて、福山は犯行現場に向かうことなく、被害者に凶器を運ばせることで復讐する。屈折ぐあいが探偵ガリレオそのまんまなので笑えます。彼の職業を接着剤の開発者に設定し、うっかり開発中の接着剤を手に塗ってしまった今泉が“結果としてロダンの『考える人』のポーズをとってしまう”のには苦笑。さすが、不確定要素。
古畑が証拠として取り出すのが、凶器をラッピングした包装紙なのはミステリとして弱い。でも、贈り物を受け取ったときに、その包装紙まで大切にする『情』を、頭でっかちの福山が理解できなかった象徴にするあたりはおみごと。
第36話「雲の中の死」につづく。
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