もしも夏目漱石の「坊っちゃん」が、ラストでマドンナと結ばれる展開になっていたら、今でも名作と呼ばれていただろうか。
小林信彦の「うらなり」で検証されたように、山嵐と坊っちゃんの行動は単にうさばらしに過ぎず、赤シャツに代表される権威は微動だにしない。でも、だからこそ坊っちゃんの短気は美しく、清(きよ)の墓でしめるラストが哀切なのだ。
「鹿男あをによし」も、まんま坊っちゃんの設定を借りながら(主人公に名前がないことまで引用している)、さりげない哀しさがむしろ主人公を引き立たせている。いやしかしこれをゴールデンタイムのテレビドラマにしようと考えた製作者がいたとはすごい。視聴率はふるわなかったようだが、DVDの高回転が人気を物語る。京大系作家おそるべし。
まさか主役のふたりに玉木宏と多部未華子とはねえ☆☆☆★★★
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