相米慎二の常で、登場人物たちは歌を歌う。夏目雅子の「涙の連絡船」が、しかし離反した父親の愛唱歌だったあたりの苦さがすばらしい。
恋人の父親に認めてもらうために漁師となる喫茶店のマスター。気弱でいながら、だからこそ無理をする。
母が出奔したことで、自分に淫蕩な血が流れていることを常に意識する娘。
妻に逃げられた屈託をすべてマグロ漁にぶつける父親。
すべてが最後の“釣果”につながる。緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市のいずれもがもちろんすばらしい。
十朱幸代は、その胸にも驚いたが、フェラチオを想起させるまでのシーンを相米にゆだねた根性がすごい。彼女の女優人生において、この映画がプラスにはたらいたかはわからない。しかし確実に、記憶に残る女優になった。
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