事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「銀閣の人」門井慶喜著 角川書店

2021-11-08 | 本と雑誌

後に銀閣寺と呼ばれることになる東山殿を建てた足利義政の物語。大河の「花の乱」を特集したときも痛感したけれども、応仁の乱の時代はさっぱりわからない。

奥さんの日野富子はこの作品ではやはり強烈なキャラ。政治的には見るべきもののなかった義政が、銀閣でめざしたものは何か。「銀閣の人」とは実は誰のことだったか、とても参考になる。

義政の執念が「わび」「さび」を生み、日本家屋というものを作り上げた経緯が、はたして事実だったかはよくわからない。しかし、作者の門井が学生時代に銀閣を訪れたとき「なんと平凡な」と失望したことが、むしろ義政の先見の明を立証しているのかもしれない。

まもなく特集する松岡正剛と田中優子の「日本問答」においても、この造りは本来ありえないはずだったのに、日本というものにぴったりと適応したあたり、納得。床の間とか、無駄な存在は義政がつくりだした。

いま酔っているので言っちゃおう。銀閣の人とは、日本人全員だったんです。書院造りは日本を席巻しました。その意味でこの書は面白かったー。

あなたの気持ちのなかにもないですか?極彩色できらびやかなものより、渋い鈍色のものが好ましいという気持ちが。

門井慶喜は現代のそんな日本人にも潜むわびさびをすくい取った。いや実はね、わたしは高校生のころからあの金閣寺が苦手で(修学旅行でも寺参りをしていないのに)、渋い銀閣寺をわけもなく応援していたのを思い出しました。応援してどうする。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「歩道橋シネマ」恩田陸著 ... | トップ | 「日本問答」田中優子、松岡... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事