直木賞受賞第一作が“寂しいじいさんをたぶらかして遺産をせしめるババア”のお話だというのも黒川さんらしいなあ。
現実の事件との類似が騒がれているのも、かつてグリコ森永事件の容疑者にリストアップされた、つまり現実を洞察する能力が飛び抜けていることの証左か。
現実の方が青酸化合物という物証を残してしまったお粗末さだったのに比べ、こちらのばあさんはなかなか優秀な殺人者だ。セックスの手練れであることで彼女は次々に男を籠絡し、金をせしめていく。しかしそれ以上にあくどいのが結婚相談所をいとなむ男で……
という展開の何が怖いかというと、実はオモテに出てこないだけで、いまこの瞬間にもこんな“作業”が進行中なのではないかと思わせることだ。登場人物たちは最後にはみんな悲惨な目に会うが、それでもひとりぐらいは高笑いを続ける設定にする方法もあっただろう。でもそれだと、あまりに現実とシンクロしてしまうのだろうか。
映画化切望。ヒロインは……秋吉久美子様でお願いします!
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