その2はこちら。
婚約中であることが「女囚さそり」続篇への出演を断る理由ではあるようだけれども、わざわざ日活の長谷部安春監督を引っぱってくることを主張したのは、3作目までを監督した伊藤俊也との確執もあったのではないだろうか。かくして、彼女は日活を離れ、東映とはケンカ別れに近い状況となっている。それにはこんな背景も。
「怨み節」のヒットをきっかけにそれからは歌でも多忙な日々が始まるのですが、その一番大きな原因は事務所が東映と年間六十曲を出すという契約をしてしまったことにあります。
……無茶でしょ(笑)。そして彼女はテレビで代表作とも言える作品に出合う。
「寺内貫太郎一家」
とにかく何より向田邦子さんの脚本が素晴らしい。情があってほだされるのです。お父さんが大暴れしている場面などは見ているとだんだん悲しくなってきます。言葉が追いつかなったり感情表現が下手だったりすると、ついつい手が出ちゃう昔ながらの男の人っていたじゃないですか。
……梶芽衣子は長女の役。足に障がいがあるという設定で、当時のテレビドラマでこれは画期的なことだった。脚本向田邦子、演出久世光彦のゴールデンコンビだからこそやれたことだろうか。
先日、小林亜星の訃報が伝えられ、浅田美代子が「みんないなくなっちゃった」と嘆じていた。確かに、向田邦子、久世光彦、西城秀樹、樹木希林(当時は悠木千帆)、加藤治子、そして小林亜星もいなくなり、寺内家でのこっているのは梶芽衣子だけになってしまった。
「曽根崎心中」(1978)
実はあの作品、わたしはノーギャラでした。
……おかげで税務署に必要経費を認めてもらうために苦労することになる。増村保造監督、原田美枝子主演の「大地の子守唄」にもノーギャラで出たというし、なんというかやっぱりこの人は気っぷのいい人なのだと思う。
その4につづく。
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