その3はこちら。
ノーギャラで出演した「曾根崎心中」の高評価はあったが、なにしろ収入がなくてはどうしようもない。
(収入がない間)どうしていたかというと、歌です。歌手としてキャバレーの営業で生計を立てていました。そこで助けてくれたのが東映でお世話になった俊藤プロデューサーでした。独立してからは俊藤さんとあまり会う機会もなかったのですが、他の仕事で京都に行くとホテルの部屋に俊藤さんからお花が届いていたりすることがあり、その後も何かとお気遣いくださっていたのです。
そうした美空ひばりさんを手がけられているジャパン・トレードの田岡満さんをご紹介くださって、田岡さんがキャバレー回りの営業を仕切ってくださることになりました。おかげで私は変なトラブルに巻き込まれることもなく、無事にステージを務めることができました。どこへ行ってもちゃんとガードマンがいて見張っていてくれたのです。
……うわあ、いい話ではあるんだけど、俊藤浩滋は前にもふれたように微妙な経歴の人だし、田岡満に至っては山口組三代目、田岡一雄の長男である。美空ひばりと山口組の関係は世間で周知のことだし、本来であればこのようなことはふれずにすませればいいところだろう。でも彼女の性格からして、恩ある人に感謝して何が悪いのかということなんでしょう。それはそれでひとつの見識だと思います。
モントリオール映画祭
映画祭の審査委員長はアラン・ドロンで、(川喜多長政&かしこ)ご夫妻と私たちがお茶をいただいていたらなんと、あの天下の二枚目がこちらにやって来ました。ご夫妻にあいさつをするためです。ところがご夫妻は彼を完全に無視。あちらはフランス語ではなくがんばって英語で話しかけているというのに。というのも、日本でのアラン・ドロンの映画はずっと東宝東和で配給をしていたのですが、この少し前に彼は金銭的に条件のいい東映に乗り換えてしまっていたのです。
……おぼえてます。これ「ル・ジタン」ですよね。ドロンといえば東和なのに、いきなり東映洋画部が出てきたので驚いた。そんなことに興味津々だった不健康な高校生。
その5につづく。
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