事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「萌の朱雀」(ビターズ・エンド 1997)

2024-09-17 | 邦画

極端にセリフが削られているので、あるいはセリフが錯綜しているので(つまりは現実に近い)、ストーリーはまことにわかりにくい。度重なるトンネルの描写の意味ぐらいは提示したほうがよかったのではないかと思う。

しかし演出のチカラは圧倒的だ。濃密な画面もあいまって、あっという間に時間が経っていく。説明の少なさのせいで、観客は描かれなかった部分でどんなことが行われたのかと考えこむことになる。

主演の國村隼が、まわりじゅうが素人なものだから、彼もアマチュアだと思われたというのが笑える。アマチュアといえば、河瀬直美監督が中学校の昇降口で見つけた少女が尾野真千子だった奇跡を思う。途中で監督も驚愕したのではないか、なんだこの娘はと。天才はこのようにして発掘された。

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「海を破る者」今村翔吾著 文藝春秋

2024-09-17 | 本と雑誌

ここに来て今村翔吾はなおもレベルアップしているかのよう。没落した御家人である河野家が、襲い来る元軍とどう対峙するかの物語。拡大を続ける元が意図するものはなんなのか。あるいは侵略そのものが自己目的化しているのか……

ウクライナ人女性を登場させるなど、リスキーな設定だけれども成功している。海戦の描写はすごい。

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光る君へ 第35回「中宮の涙」

2024-09-16 | 大河ドラマ

第34回「目覚め」はこちら

この三連休も、寺や畑の草刈り。朦朧となる。少しずつ、涼しくはなっているのだけれど、よくぞこんなに汗がかけるものだと我ながらあきれる。

そして部屋にもどってエアコンをガンガンに効かせ、それでも足りずに扇風機も「強」にして身体に当てる。ほんとに不健康で不経済な生活。

さて大河。今回はついに一条天皇(塩野瑛久)と彰子(見上愛)が結ばれる展開。

まさにこの回に向けたように、脚本の大石静さんが文春オンラインにおける有働由美子アナとの対談でかましまくっている。

「欲しい男は必ず押し倒していました。好きな人には『好きです』と打って出る。男の人って気が弱いから、必ず『そんなに僕を好きなら付き合って見ましょうか』ってなりました、昔は」

おおおすごいな。亡くなった旦那さんとはお互いに嫉妬しない関係で、どちらもよろしくやっていたとか。平安時代の男女関係もびっくり。まるで宍戸錠が奥さんと「嫉妬するのも嫌だろうし、お前も他の男とやっていいから」と協定を結んだのに似ているかも。違うかも。

だから彰子が涙ながらに「お上、お慕いしております」というどストレートな告白をし、一条天皇がついに陥落するあたりの展開に似ているかも。やっぱり違うかも。

そして大石脚本のおみごとなところは、紫式部(吉高由里子)が道長(柄本佑)に向かって源氏物語について

「わが身に起きたことにございます。わが身に起きたことは全て物語の種にございますれば」

「物語になってしまえば、わが身に起きたことなど霧のかなた」

は紫式部に仮託した脚本家としての強烈なマニフェストかな。名セリフですよね。

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「MEG ザ・モンスターズ2」Meg 2: The Trench(2023 WB)

2024-09-14 | 洋画

1作目はこちら

あっつー。まあ、去年ほどではないにしろ、暑いことは暑い。こんなときは何にも考えなくてもすむ映画にしよう。

にしてもおバカな映画だったなあ。子役はオトナを危機に陥れるためだけに出ているようなものだし、中国資本が例によって入っているのでチャイニーズビューティが露骨に前面に出てくる。

でもジェイソン・ステイサムはいつものように苦虫を嚙み潰したような顔で全力で走り、泳ぐ。プロだなあ。

この残暑はいつまで続くんざん……このギャグを言った途端にアウトですかね。

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「渇水」(2023 KADOKAWA)

2024-09-13 | 邦画

日照り続きで、給水制限が行われている地方都市で、水道料金を徴収する市役所職員。最後の手段として、料金を払わない世帯は停水執行されてしまう……

このシチュエーション自体がかなり考えてある。水がシンボライズするものとはなにか、水を止める行為によって、止めるほうの心も渇いていく。

なんか学校事務職員の集金未納対策にも似ていてしんどくなる。公立の学校だから停水のような強力な手段はないわけだけど、この市職員のように追いつめられることも少なくないかも。

コンビで徴収にまわるのは生田斗真磯村勇斗。この人たちは作品選択が絶妙だし、このふたりをキャスティングした製作者のセンスもすばらしい。

東日本大震災のときに、大規模な停電のあとに、通電していく経路が不自然だと住民は感じたわけだけれど、あれは“水道を復旧させるために通電を急いだ”らしい。人は水がなければ生命の危機に陥るわけなので。

だから生田斗真たちの行動はとても重い。そして彼らは、母親(門脇麦)からネグレクトされている姉妹と会ってしまい、それがきっかけとなってある行動を起こす。

すばらしい作品でした。これだけの脚本が十年も映画化されなかったというのが不思議だ。

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「ラストマイル」LAST MILE(2024 東宝=TBS)

2024-09-11 | 邦画

二カ月も映画館に行っていないのに、ネットで興行成績だけはチェックしている。そしたら、前評判もなにも聞いていなかった作品が第1位に。しかも大ヒットなのである。

タイトルは「ラストマイル」。ひょっとしていわゆるキラキラ恋愛ムービーなの?

全然違いました。

製作:新井順子 脚本:野木亜紀子 監督:塚原あゆ子

という女性トリオの作品ではありながら、骨太のアクションミステリーだったのだ。しかもとんでもなく面白いのでした。久しぶりに映画館に行ってよかった。

ラストマイルというのは、顧客に到達する最後の1マイルのことで、この作品では宅配業界の内実が詳細に描かれている。モデルになっているのは、米資本のネットショップだからAmazonと、利用料を値切られて苦しんでいる宅配はきっとクロネコヤマトの確執。

オープニングで描かれるのはネットショップの巨大な倉庫。数百人の職員がいるがほとんどが派遣。正社員はわずか数名にすぎない。そこへ、センター長として満島ひかりが着任する。古株の(といってもわずかに二年)正社員の岡田将生は彼女を冷めた目で見ているが、発送した荷物が顧客のアパートで爆発するという事件が発生して……

演出がキレッキレだし、伏線はりまくりの脚本もすばらしい。

この映画の特徴は、女性トリオがつくったドラマ「アンナチュラル」「MIU404」と世界観が共通していること。だから石原さとみ、井浦新、窪田正孝、星野源、綾野剛たちが出てきて豪華なことだ。

もちろん、これらのドラマを見ていなくても、ひたすら面白いことに変わりはない。どうやってドラマにからんでくるのかさっぱりわからない安藤玉恵がラストで……な展開もすばらしい。宇野祥平大倉孝二などの脇役も渋い。

大ヒット納得。んで両ドラマと同じようにテーマソングは米津玄師です。

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うまい店ピンポイント 伍長、こじゃれたお店に行く

2024-09-10 | 食・レシピ

癒庵、満月、四十番、やまなか家篇はこちら

「伍長、夏休みが終わった途端にこじゃれた店に行ってんじゃないすよ。人としてどうなの」

「余目の食楽(くら)すんげーうまい」

「ルッコラとモッツァレラチーズのサラダとか、伍長に合いません!」

「Tシャツに短パンで行ったら、いっしょの人間に、人としてどうなの、と説教くらいました(笑)」

……いやはや本当においしかった。お酒も気が利いている。客あしらいも最高。庄内町でこの業態はきついと思うので、町民はちゃんと通うように。

自分がダメだと思うのは、酒田と余目を送迎してもらって、学校に置いていたクルマを代行で運ぶために、また上安町で飲んでることかしら。さーせん。ほんとに、人としてどうなの。

 

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光る君へ 第34回「目覚め」

2024-09-09 | 大河ドラマ

第33回「式部誕生」はこちら

先週に引き続き、週末は畑の草刈り。暑いなか、刈り払い機をぶん回していると、次第に意識がもうろうとしてくる。いかんいかんこまめな水分補給だ。と軽トラで近くの自動販売機に走り、コーラを一気飲み。不健康な生活。

きのうも朝6時から草刈り。そして長寿祝いのお赤飯を近所の餅屋に受け取りに行く。そして配って歩く。自治会長はつらいよ。

あ、ちょっと宣伝していいですか。このお赤飯は酒田女鶴(めづる)という品種のもち米でできているんだけど、すんごくうまいです。敬老会で自分の分のお赤飯をいただき、お昼にぱくつく。ああおいしい。舞妓さんの踊りも見れたし、自治会長は楽しいよ。

そんなことだから18時のBSのオンエアを見ている最中に撃沈。20時からのでようやくフルに見ることができました。

興福寺の僧らが都に押し寄せて道長に要求を突きつける。しかし道長は政治家としての意地(のために現首相は辞めると言い放ちましたが)もあってはねつける。しかしそれ以降、都では不幸がつづく。そして道長は……な展開。来週はテロの予感。

源氏物語は次第に人気を集めていく。天皇すら、次はどうなると紫式部に直接に問うぐらいだ。しかし、その面白さをまったく理解できないのが中宮の彰子(見上愛)だ。中宮とはいえ、一条天皇との接触もなく、男女間の機微など想像すらできない彼女に、あの物語は確かにしんどいだろう。

しかし紫式部のアドバイスもあり(作者本人からだから説得力がある)、彰子は次第に“目覚め”ていく。被害者ルックスの彰子の覚醒は、喜ばしいような残念なような。

曲水の儀、というイベントにはわらった。どう見てもお風呂のアヒル人形を水に浮かべて……TOKIOが出てくるのかと思ってしまいました。

第35回「中宮の涙」につづく

 

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うまい店ピンポイント 2024年夏休み篇その4

2024-09-09 | 食・レシピ

吉野家&丸亀製麺&出羽そば&米沢屋篇はこちら

「夏休み終わっちゃいましたね伍長」

「夏が終わってほしいわ。あぢー」

「癒庵、満月、四十番、やまなか家ですか、がんばったじゃないですか」

「その上から目線はやめろ」

癒庵と満月の繁盛はいつもどおり。特に満月は県外車が駐車場にたくさん。

四十番に行ったのはあの豪雨のあと。被害が大きかったという竹田を通ると、まだ土嚢を積んだ家もありました。

やまなか家では、HPでチェックしたら冷麺は800円とあるけど、平日のランチだけかもしれないけど550円でいただけました。びっくり。

食楽(くら)篇につづく

 

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「編集長の条件 醍醐真司の博覧推理ファイル」長崎尚志著 新潮文庫

2024-09-07 | アニメ・コミック・ゲーム

漫画原作者として高名な長崎尚志(いろいろあったんですけど)が、ホームグラウンドであるマンガ雑誌の編集の裏側を描く。

たくさんのマンガネタが仕込んであって、それだけでも読ませる。手塚治虫の「新寶島」がいかに革新的な存在だったかを(読んだことないけど)初めて知りました。白土三平の衝撃もよくわかんないじゃないですか。カムイ伝の再開でしか(もちろんサスケはあったわけだけど)よくわかんないし。

だからタッチが似ている「子連れ狼」の小島剛夕に話が及ぶなど、小学館の編集者だった経歴(すんごくえらい人だったんですよ)が活かしてあって面白いっす。

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