保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

保津峡でハイカーが転落事故

2006-07-10 00:14:12 | 船頭
今日、私達の船が嵐山へと入る最後の急流・大瀬を下っていた時のこと。

右岸側の崖道を歩く複数の人影が視界に入ってきた。

その人影は紺やオレンジの服装をしていた。

そうだ!彼らは警察と消防署のレスキュー隊だ。

「これは渓谷で何かあった!」直感的に悟った。

いやな予感にかられた私はすれ違いざまにレスキューの一人に
大きな声で何があったのか?問い掛けた。

「谷でハイキングの人が転落事故を起こしたので救助に向います」
という返事が返ってきた。

「またか!」
最近、従来のような整備された山道では面白くないのか、
険しい保津川峡谷の中をハイキングするグループが増えている。
しかも、その殆どが年配者のグループときているから危険極まりない。

今日の事故も年配の方によるものだった。

10m以上もある落差のキツイ崖を滑り落ちたらしく、
かなりひどい怪我をされいるようで危険な状態との連絡が入る。

ゴミ清掃活動の時もいったが保津峡の山道は獣みちのような細い道が続き
途中、傾斜も厳しい崖や道すらなくなっている箇所もあることから、
山道を歩きなれた人でも細心の注意を必要とする難所が多いのだ。

毎年、何軒かの転落事故も報告されているが今年では初めての事故だ。


レスキュー隊を乗せたゴムボートが嵐山の千鳥ヶ淵を横切り現場へと急ぐ。
救助は時間との勝負だ。一時も早く駆けつけなくてはいけない。
保津川下りの船で救助したことも多いので、応急処置ができる様に
船頭は皆、普通救急救命士の資格をもっている。


上空からは救助ヘリコブターも出動していた。
かなり大掛かりな救助作業になりそうだ。

渡月橋の上にも消防車が待機し事態の状況を見守っていた。
嵐山観光のシンボル渡月橋も今日だけは物々しい雰囲気が支配していた。

転落者はどうやら数十分後に救助され、至急病院に運ばれたそうだ。

都会の方が自然にあこがれて、美しい保津峡を歩きたいという気持ちは
よく判るが、今の季節、マムシやスズメ蜂の巣も多く作られている
ので現地をよく熟知した案内人を付けるなり、下準備をしっかりしてから、
ハイキングを楽しまれることをオススメする。

保津峡の自然は原風景の坩堝でとても魅力的な場所ではあるが、
そこは有史以来人が住めなかった危険な場所である。
人工の手が加えられてない自然は美しい景色を味わえるばかりでなく、
だからこそ常に危険と背中合わせだということをしっかり認識して頂きたい。