先月も「モヨウカスベ」を食したばかりの私。
しかしまた新たなガンギエイ科魚類と巡り合うことになった。それが今回のガンギエイ目・ガンギエイ科・Beringraja属のメガネカスベ。
メガネカスベはその種標準和名こそよく聞くエイであったが、意外なほどWEBの画像が少ない。以前私は別のガンギエイ科魚類をメガネカスベと思い込んできたが、ここでようやく本物のメガネカスベと出会うことができた。
今回は全長45cmほど。しかし交接器があり、雄と考えられる。大きいものは全長1mに達するともいわれ、ガンギエイの中でもゾウカスベやテングカスベに次ぐ大型種といえるようだ。以前愛媛県のスーパーで北海道産の巨大なエイ鰭を発見し、これが何の鰭かわからなあったが、メガネカスベが1mを超える巨大な種であると知り、納得。
腹面は以前紹介したモヨウカスベほどロレンチニ瓶があるように見えない。
しかし口や鰓の周辺にはびっしり。ちなみに口の上のほうにある1対の穴のようなものは鼻孔であり、眼ではない。ロレンチニ瓶もここに集中させて効率を高めようとしているのか。
雄のメガネカスベの尾。雄の尾背面には1列の棘がならんでいる。雌では複数列の棘があるようだが、いずれにせよコモンカスベのようなとげとげした感じもない。棘はアカエイやトビエイのような毒棘ではなく、触れてもそれほど痛みがあるようなものではないが、うっかり触れてしまうと手を傷つけるおそれがあり、注意が必要である。そしてその棘の後方には小さな背鰭が二つある。そして尾鰭もあるのだが、尾鰭は尾端背面にあり、腹面には尾鰭の隆起がない。
本種は長い間Raja属とされたが、Ishihara et al. (2012)は卵殻の形態や分布パターンの分析をもとにガンギエイ科魚類の整理を行い、本種はBeringraja属に移動された。この属に含まれるのはメガネカスベと、世界最大級のカスベであるBeringraja binoculata(日本には産しない)の2種のみとされる。属の学名の由来はベーリング海のRaja(ガンギエイ科の属)、ということであるが、見た感じでは属の標準和名はついていないようである。さらにソコガンギエイの仲間はガンギエイ科とは別の科に移されているが、こちらの科の学名はついていない。詳しくこれらの件にしりたい方は以下の文献も参照にしてほしい。
Ishihara, H., M. Treloar, P. H. F. Bor, H. Senou & C. H. Jeong, 2012. The Comparative Morphology of Skate Egg Capsules. (Chondrichthyes: Elasmobranchii: Rajiformes). Bulltein of the Kanagawa Prefectual Museum (Naturea science) No.41: 9-25.
メガネカスベの日本における分布域は、北海道~千葉県銚子までの太平洋岸、日本海岸、東シナ海。北方に多いとされているが、沖縄舟状海盆にもいるようだ。ほかに朝鮮半島、中国、ロシアの日本海沿岸、ピーター大帝湾にもいるらしい。Beringraja binoculataの分布域はベーリング海から北米東岸。
食べ方は前回と同様に唐揚げ。サメやエイは臭いのでは、という人も多い。特にガンギエイ科のエイのいくつかは世界でも有数の臭さを有する「ホンオフェ」の原料になるのだが、ホンオフェは発酵させて腐らせたエイを使用した韓国料理であり、新鮮なガンギエイは臭みもないのである。今回も唐揚げは非常に美味であった、坂口太一さん、ありがとうございました。