今日はちょっと色々あって心が疲れているので簡単にいきます。今回の魚はイラ。スズキ目・ベラ科・イラ属の魚である。イラ属はベラ科の中の「タキベラ亜科」に含まれる。
イラの特徴は体側前半部にある黒色の斜めの帯。この帯の後ろに白い薄い帯があることが多い。また幼魚期には体側に3本の横帯があり、1本目と2本目の間に白い斜め帯がある。また背鰭には眼状斑もあるが、成魚では横帯も眼状斑も残らない。
分布域は千葉県・新潟県以南の本州~九州、朝鮮半島、台湾、中国、南シナ海。琉球列島からはほとんど知られていない。宇和海では珍しいものではなく、きさいや広場でも何度か大きいものを見ている(全長40cmにもなる)。しかし結構見られるため油断したか、いまだに食したことがない。沖縄では同属のシロクラベラを「まくぶ」とよび、高級魚扱いしているのだが、イラは高級魚扱いされていない。
シロクラベラ
日本のイラ属魚類は従来はクサビベラ、ミヤコベラ、シロクラベラ、クラカケベラ、そしてイラの5種類が知られていたが、近年はイラモドキ属やシチセンベラ属をイラ属に統合する考えが受け入れられており、「日本産魚類検索」第三版では7種が掲載されているが、このほかにも数種が日本から知られている。近年日本初記録種としてユウモドロベラという種が報告されたり、「南日本太平洋沿岸の魚類」という本でミナベイラという種があらたに掲載されたり(学名はまだない)、さらに分類学的な問題を抱えていて厄介な種Choerodon zamboangaeなんていう種も知られている。このうちミナベイラはミヤコベラに似ているが、体側の色彩や斑紋が異なるようだ。
世界からは少なくとも25種が知られている。東アフリカから中央太平洋に広く分布しているが、ハワイ諸島や南北アメリカの西岸、大西洋には一切生息していない。大きさは50cm以下の種類が多いが、オーストラリア近海のChoerodon rubescensや、日本にも生息するシロクラベラなどのように1mほどになる種も知られている。
テンス
イラとよく間違えられる魚にテンスがいる。しかしテンスの仲間はイラよりもだいぶ薄っぺらい印象を受ける。また背鰭の形状や、側線が二つに分かれているというところもイラと異なるところである。もちろんよく見るとイラとだいぶ斑紋が異なっている。生態も大きく異なり、イラは夜間岩陰で眠るのに対し、テンスは砂の中に潜って眠るところも異なっている。テンスはベラ科のなかでもモチノウオ亜科に含められていることが多いが、テンス属とテンスモドキ属からなる別亜科とすることが望ましいように思われる。